総務省がVoLTE技術基準策定、LTE通信・音声通話の一本化で省電力や災害時対策などにメリット

総務省が6日、LTE回線を用いた音声通話(VoLTE)に関する技術基準を策定したことを明らかにした。早ければ2013年夏頃にも対応スマートフォンが発売される見通し。

総務省が開催するIPネットワーク設備委員会では、かねてより通信キャリアなどとVoLTEの導入について検討を進めており、今回策定した技術基準をもとに、今年度末にも省令として施行したいとのこと。

VoLTE導入は世界的な流れに


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エリクソンによるVoLTEデモ

既に国際的な標準仕様は2010年9月に凍結されており、2012年度には韓国のKT、LG U+などのオペレータが、2013年度には米国の主要キャリアがVoLTEのサービスを開始する計画だ。
日本もこれに遅れまいと、既にNTTドコモが導入方針を発表済み。今回、総務省の方針が固まったことで、他のキャリアもこれに続く見込みだ。

現在、NTTドコモとイー・アクセスがサービスを提供しているLTEの回線は、全てデータ通信で利用されている。LTE対応のスマートフォンは、データ通信にはLTE回線を利用するものの、音声通信は前世代の通信規格である3G回線に自動的に切り替えて利用している。
今年の秋からサービスを開始するKDDI、ソフトバンクのLTEでも同様の仕組みになっている。

VoLTEとは、LTE回線で音声通話を実現する仕組みのことで、これが実現すると対応するスマートフォンは3G回線を使うことなくデータ通信も音声通話もすることができるようになる。

VoLTE導入によるメリット

VoLTEが実現することでどのようなメリットがあるかというと、主に以下の3点が大きいのではないだろうか。

  1. 周波数の効率的な運用
  2. 省電力化
  3. マルチメディア対応

1点目の周波数の効率的な運用とは、3Gに利用していた周波数を同じ帯域でより大きな通信量をさばくことができるLTEに切り替えることができるようになり、通信回線の効率化が図れるようになることを指している。
LTEに音声通話も移行することで、3G回線の負担が減るため、3G回線に利用していた周波数をLTEに活用することが可能になるためだ。
既に通信量の増大が大問題となっている通信キャリアは、一刻も早く3GからLTEへの移行を進める必要があるため、VoLTEの導入を積極的に推進したいと考えているようだ。

2点目の省電力化は、関心のあるユーザーも多いはず。一説では、シングルモードのVoLTEになると消費電力が少なくなり、従来の連続通話時間がおよそ2倍になると言われている

3点目のマルチメディア対応も注目。これまでの音声通話にビデオやインスタントメッセージ、ファイル転送などのサービスを付与できるようになる。
既にSkypeなどのサービスが似たような機能を実現しているが、これをキャリアのサービスとして実現することができるようになる。土管化が懸念されている通信キャリアにとっては、突破口になるかもしれない重要なポイントだ。
例えば、ドコモが提供している通話翻訳サービスや「しゃべってコンシェル」などが、従来の音声通話にサービスとして絡んできたら面白いのではないだろうか。

また、KDDIはVoLTEを利用して、災害時の優先電話についての構想を明らかにしている。
従来は、災害時には音声通話の規制をかけて、優先端末でのみ通話が可能となる仕組みだった。VoLTEではデータ通信を制御し、音声通話を優先させることで、災害時でも通話が繋がるようになるという。

サンケイビジネスオンラインが報じたサービス料金引き下げ効果と言うよりは、どちらかというと「値上げ防止効果」という意味合いが強いところではある。
しかし、ユーザーにとっても十分なメリットを得られそうなVoLTEの取り組みについて、大きな前進があったことは嬉しい限りだ。