移動手段のひとつとして当たり前の存在になりつつある電動モビリティシェアリングサービス。2024年8月、その世界最大手である「Lime(ライム)」が日本で提供開始しました。特徴は立って乗る「電動キックボード」だけでなく、「座って乗る電動シートボード」を利用できること。また、ヘルメット着用で割引が受けられるという珍しい特典もあります。
今回は、Limeの特徴や注意点から実際の利用方法、使ってみた感想までわかりやすく紹介します。
Lime(ライム)とは?
Lime(ライム)は、Lime株式会社が提供する、電動キックボードをはじめとする電動マイクロモビリティのシェアリングサービスです。日本では聞きなじみがないかもしれませんが、2017年から世界280都市以上で電動モビリティシェアリングサービスを展開する世界最大手の有名企業です。

そんなLimeが、2024年8月19日からアジア唯一となる日本でのサービス提供を開始。日本ではすでに自転車や電動キックボードなどのさまざまなシェアリングサービスが提供されていますが、なぜ日本への参入を決めたのでしょうか。
Lime株式会社の広報担当者は「日本は大都市の人口密度が高く、以前から日本の市場に関心を持っていました」と話します。また、日本の社会課題に対して電動マイクロモビリティが貢献できる余地があることも理由のひとつとして挙げています。
「日本は交通渋滞やオーバーツーリズム、物流のラストワンマイル問題といった社会課題に直面しています。そういった課題を解決するために、モビリティの選択肢を増やして利用者の多様なニーズに応えていくことが重要なフェーズに来ていると思っています。Limeは長年海外で培ってきた経験や走行データをもとに、安全性や乗り心地などを追求した車両へと改良を重ねてきました。今まで安全面などに不安があった人でも“これだったら乗ってみよう!”と思ってもらえるかもしれません。いろいろなタイプのサービスや車両が出てくれば利用者の選択肢が広がり、多様なニーズに応えられるのではないかと考えています」

2024年12月現在、世界32カ国280都市以上でサービスを展開。アメリカのサンフランシスコに本社がある
「電動キックボード」と「座って乗る電動シートボード」の2種類
Limeのポートには、立って乗る「電動キックボード」と、座って乗る着座式の「座って乗る電動シートボード」の2種類が用意されています。

立って乗る電動キックボード

座椅子が付いた電動シートボード
着座式のシートボードがシェアリングサービスとして提供されたのは国内初とのこと。「椅子がついているので立ちっぱなしが辛いという人も座って移動できます。後ろにはカゴがついているので荷物を入れられるのもポイントです」(Lime広報担当)。
利用できるのは都内12区と沖縄県那覇市内

サービスは今後拡大予定
2024年12月末時点で利用できるのは、渋谷、新宿、目黒、世田谷、豊島、中野、台東、墨田をはじめとした都内12区と沖縄県那覇市のみと、現時点では利用できる範囲が限られています。
今後については「いま設置されている地域をはじめ、ポートの密度も高めて利用者の利便性を高めていきたいと思っています」(Lime広報担当者)としており、サービスが拡大されるのを期待しましょう。
Limeのメリット
Limeを利用するうえでのメリットをまとめました。
基本料金は100円、30分以上からお得な料金プランも
Limeの料金は、基本料金100円+30円/分。基本料金100円(ロック解除料金)に加え、1分ごとに30円が加算されていく仕組みです。つまり、最初の1分は130円からスタートして、1分ごとに30円加算されていくため、30分利用で1000円というイメージです。
すでに日本で電動キックボードのシェアリングサービスを提供している「Luup」の場合、基本料金50円+15円/分とLimeの半額で、30分利用なら500円です。そのため、Luupと比べると一見割高に感じます。しかし、Limeには「LimePass(ライムパス)」というパスが用意されており、30分パス(1日)なら490円で利用できます。そのため、パスを使えば通常料金よりかなり割安で利用できます。
「LimePass」は以下の4つの種類があるので、利用時間や利用頻度などから自分に合ったプランを選択して利用するのがおすすめです。
- 30分パス(30分/1日):490円
- 60分パス(60分/3日):890円
- 160分パス(160分/7日):1980円
- 300分パス(300分/30日):3480円
たとえば30分パスなら、1日30分以内なら何回乗り換えてもOK。片道30分以内で使用しても、行きに15分・帰りに15分と2回以上に分けて使用しても490円です。パスの時間をオーバーすると、1分ごとに通常料金の30円が加算されていきます。
支払い方法はApple Pay、Google Pay、クレジットカードの3つ。QRコード決済や電子マネーなどは利用できないので注意してください。
ヘルメット着用で料金の割引などの特典が受けられる

[ヘルメットの確認]をタップ

認証されると10%割引が適用される
Limeでは、ヘルメットを着用すると都度の通常料金から10%の割引を受けられる「ヘルメットセルフィ」があります。
走行前に画面の[ヘルメットの確認]をタップするとカメラが立ち上がるので、ヘルメットを着用している自分の姿を写すとAIが5秒程度で処理して判定してくれます。

友達招待で無料ロック解除クーポンがもらえる
またユーザー登録をおこなえば、友達の招待で獲得できる「無料ロック解除クーポン」もゲットできます。車両のロック解除にかかる基本料金100円が自分も招待した相手も1回ずつ無料になります。
これ以外のサービスについて、「Limeは安全対策に力を入れており、三井住友海上などパートナー企業と共同で試乗しながら安全な利用方法や交通ルールを学べる安全講習会をおこなっています。受講された人には30分無料クーポンを配布しています」(Lime広報担当)とのこと。
このほか季節性のキャンペーンもおこなわれています。
JALのマイレージが貯まる

メニュー画面から[プロモーション]をタップ

連携するとJALのマイルが貯まる
LimeではJALのマイレージバンクと連携でき、Limeを利用するたびにJALのマイルが100円につき1マイル貯まります。
連携させるには、メニュー画面から[プロモーション]をタップ。「パートナー特典」にある[JALマイレージバンク(JMB)を連携する]をタップして、氏名(ローマ字)とJMBお得意様番号を入力するだけです。
マイルの付与は、利用月の約2カ月後。JALのマイレージを貯めたい人にもLimeはおすすめです。
自賠責・自動車保険を導入、万が一のときもサポート
シェアリングサービスを利用する際に気になるのが、事故といった万が一のときのサポートです。
Limeでは、法律上の義務として必ず加入しなければならいない「自賠責保険」と、対物・対人賠償事故を補償する任意保険「自動車保険」の2つを導入し、万が一事故に遭った際の補償を確保しています。そのため、ユーザーはLimeを利用するために新しく保険に加入する必要はありません。

ハンドルの右側に緊急連絡先が書かれた黒いシールが貼られている
右手のハンドル部分には、いざというときの緊急連絡先が記載されています。
Lime利用中に万が一事故が起きてしまった場合の対応については、「けが人がいる場合は救急に連絡、また速やかに警察に通報してください。そして、車両に日本語と英語で書かれた保険会社の事故受付センターに連絡し、サポートを受けてください」(Lime広報担当者)
Limeの使い方
ユーザー登録からキックボードを返却するまで、実際にLimeを利用する手順を紹介します(Android版・iOS版どちらも手順は同じ、今回はiOS版で解説)。
まずは専用アプリをインストールし、事前にユーザー登録を完了させる必要があります。ユーザー登録自体の所要時間は2~3分程度なので、乗り始める直前でもできます。ただし事前テストもあるため、あらかじめ落ち着いた場所で登録をしておくほうがスムーズです。
ユーザー登録の手順
実際に車両を借りるのに必要なユーザー登録の方法を解説します。登録はアプリからおこないます。
アプリをインストールする

Limeのアプリをダウンロードする

Bluetooth接続を許可する(必須)
アプリをインストールして開くとBluetooth接続の許可を求められるので、[許可]を選択します。電動キックボード等のロック解除にBluetoothを使用するため、必ず許可してください。
ログインする

任意の方法でログイン

位置情報を許可する(必須)

通知を許可する
続いてログインを求められます。任意の方法でログインしたら、位置情報や通知を許可しましょう。特に位置情報は電動キックボード等の検索や走行の追跡に必要なため、許可する必要があります。
通知を許可したら、サインアップは終了です。
2択式のテストを受ける

[サインアップを完了]をタップ

テストに答える

テストが終わったら[閉じる]をタップ
[サインアップを完了]をタップすると「運転者安全クイズ」が始まるので、2択形式で回答していきます。
テストは一度間違えたら最初からやり直しというわけではなく、正しい答えを選べば大丈夫です。所要時間は2~3分。全問正解して初めて利用開始できます。
テストが終了したら[閉じる]をタップします。
支払い方法を登録する


支払い方法を選んで登録する
テストが終わると、次は支払い情報の登録を求められます。任意の支払い方法を選択して情報を登録してください。今回はクレジットカードを選択しました。
年齢確認の登録をする

[今すぐ始める]をタップ

カメラへのアクセスを許可する

登録が無事に終わったら[完了]をタップ
続いて、年齢確認のできる身分証を登録します。運転免許証、パスポート、在留カード、マイナンバーカードから選択できるので、任意の証明書を選択してください。カメラのアクセスを許可するとカメラが立ち上がるので、撮影してアップロードします。
身分証の登録が完了すれば、ユーザー登録は終了です。最後に[完了]をタップしましょう。
車両を借りて乗車するまでの手順
実際に車両を借りて走り出すまでの手順を解説します。
車両を予約する(任意)

充電が少ない車両

フル充電の車両を[予約する]をタップして予約した

予約は10分間無料
アプリ上に利用可能なポートが表示されます。電動キックボードのマークをタップすると、その車両のタイプや走行可能距離などを確認できます。車両のイラストの外枠にある緑色の円は残電量で、緑色の円が欠けていると残電量が少ないことが視覚的にわかります。
[予約する]をタップすると、10分間無料で車両を予約することができます。利用者の多い地域で確実に車両を確保しておきたいときなどに利用すると便利です。
今回は、国内のシェアリングモビリティでは初という「座って乗る電動シートボード」を予約して乗ってみました。
予約した車両を探す/その場で車両を借りる

ベルを鳴らして予約した車両を探すことができる
ポートに着きました。
駐車台数が多いとどの車両を予約したのかわかりにくい場合もありますが、アプリにある[ベルを鳴らす]というボタンをタップすると、予約した車両が音を出して光るので簡単に見つけることができます。

ハンドルの部分にあるQRコードを読み込む
事前に車両の予約をしておらず、ポートで直接借りる場合は、キックボードのハンドルの部分にQRコードがあるので、これを読み取ります。

アプリ内のカメラでQRコードをスキャンする
アプリ上で[スキャンする]のメニューをタップするとリーダーが立ち上がるので、QRコードを読み取ればOKです。ハンドル部分にあるスマホスタンドにスマホを装着させましょう。

ハンドル部分にあるスマホスタンドにスマホを装着
走行を始める

[→]を右にスライドさせる

利用方法を再度確認する
アプリの[→]マークを右にスライドして「走行を開始する」にします。キックボードの利用方法が再度表示されるので、スクロールして内容を確認します。
[完了]をタップすればいよいよ走行開始です。

左上のユーザーマークをタップ

[Limeパス]をタップ

割引プランを選ぶ
30分以上乗る場合は、ポートへ行く前にあらかじめパスを買っておくとスムーズです。
ホーム画面左上のユーザーマークをタップするとメニュー画面が表示されるので、[LimePass]をタップします。そこから、割引パスを購入することができます。

利用するプランを選んだら[今すぐ支払う]をタップ

30分のLimeパスが購入できた
購入したいパスをタップし、[今すぐ支払う]をタップしたら購入完了です。
ポートに返却するまでの手順
実際に走り始めてから、ポートに車両を返却するまでの流れをみていきましょう。
走行を一時停止/再開する



走行を開始すると画面上部に「走行中」と表示されるようになります。走行を一時停止したい場合は、左下の停止マークをタップし[走行を一時停止]をタップすれば、一時停止できます。
[▷]をタップすると走行を再開できます。
返却するポートを探す

ポートの駐車可能台数を確認する
あとは目的地まで走行します。地図を見ながら周辺を走行し、近くのポートに停めることにしました。
地図上に表示されている「P」マークが駐車可能なポート場所です。「P」マークをタップすると駐車可能台数を確認できます。駐車可能台数が「0」だと駐車できないので注意しましょう。
ポートは、パッと見ではわかりにくい場所に設置してある場合があります。ポートの場所は説明付きの写真が載っているので、それを見ながら向かうと便利です。
写真を撮って返却を完了する

[走行を終了する]をタップ

[適切に駐輪しました]をタップ

車両を撮影して返却完了
ポートに到着しました。[走行を終了する]をタップします。地面に描かれた緑色の枠に収まるように駐車し終わったら、[適切に駐輪しました]をタップ。カメラが立ち上がって車両の写真撮影を求められたら、車両を撮影して終了です。
利用明細(領収書)を確認する

「詳細領収書」をタップ

請求書を確認できる

末尾にはPDFダウンロードとメール送信の項目がある
写真のアップロードが終わると走行終了の画面に切り替わり、料金や走行時間などが表示されます。「詳細領収書」をタップすれば、請求書を確認できます。
請求書のPDFをスマホ端末にダウンロードしたり、Eメールで請求書を送信したりすることも可能です。


走行時のメニューから[ヘルメットの確認]をタップし、ヘルメット姿をカメラ認証させる
ヘルメットを着用して走行すると、利用料金が10%割引になります。
走行時のメニューを下から上に引き上げると[ヘルメットの確認]という項目があります。タップするとカメラが立ち上がり、ヘルメットの装着している姿をカメラに写して認証されると「確認成功」という通知が来て割引が適用されます。
走行する際はヘルメットの撮影をしてから走り出したほうがお得なので、忘れずに実施しましょう。
Limeを利用する際の注意点
実際にLimeを利用してみて気づいたことや注意点を紹介します。
利用前にアプリで事前テストを受ける必要がある



テストは2択形式。間違えると「再度試行してください」と表示されるので、正しい答えを選択しよう
Limeを利用するためには、ユーザー登録をするタイミングで、アプリ上で安全教育の事前テストを受講する必要があります。Limeの電動キックボードや電動シートボードは、自転車やバイクとはまた違った乗り物で「特定小型原動機付自転車」という扱いになります。最高速度や走行場所、右折方法などが自転車やバイクとルールが異なる場合があるのです。
グローバル共通のアプリで、日本で利用する場合の言語は日本語と英語に対応しています。「交通ルールは地域によって異なるため、海外の人が日本に来たときでも不自由なく使えるように日本の交通ルールに合わせた英語の事前テストを作成しています」(Lime広報担当)。海外の人も英語で事前テストを受け、全問正解しないと日本で使用できないというわけです。
テストは、全問正解して初めてLimeを利用できるようになります。
初心者は乗車にコツが必要、はじめは車や人通りの少ない場所で練習を
シェアリングサイクルは利用したことはあるものの、電動キックボードは超初心者の筆者。まず、電動キックボードの重さに驚きました。
最初にキックボードのスタンドを上げて車体を後ろへ引き、行きたい方向へ転換をしたかったのですが、自転車よりも重量感があり、車体を思うようになかなか動かせませんでした。これは電動キックボードの操作に慣れていなかったこともあると思います。

「GO」と書かれたスロットルを下げるだけでは動かないので、最初にまず助走する
キックして助走をつけたあと、ハンドルの右側にある「GO」と書かれたつまみ(スロットル)を押し下げるとモーターが動き、自動で前に進みます。急発進するのを避けるため、スロットルは一気に下げるではなく、ゆっくりと押し下げるのがポイントです。
コツをつかんだらスイスイ移動できるようになり、非常に快適でした。初心者はまず、広い道などで車体の方向転換や走り方を含め少し練習してから道路に出たほうがよいでしょう。
少しだけ車道に出て走ってみましたが、横を車が追い越していく際は少し恐怖感がありました。初めて利用する人は道路幅の広い道を選んで走ってみたほうが安心。機会があれば試乗も可能な安全講習会に参加してみるのもおすすめです。
自転車とは異なる交通ルールに注意


正しく利用するためにも安全ガイドは必ず理解すること
電動キックボードは、自転車と原付バイクの間となる「特定小型原動機付自転車」です。交通ルールは自転車と同じようで同じでない部分もあるため、交通ルールや標識を守って走行する必要があります。Limeでは交通安全の事前テストがありますが、ルールが不安な人はメニューの「安全ガイド」からいつでも利用方法を確認できるので、事前に読み込んでおくとよいでしょう。
また、走行するときに事故が起きないようヘルメットを必ず着用し、他の車両と十分な距離をあけたり、路肩駐車の追い越しなどに注意したりすることが重要です。
乗車する際は服装や天気にも注意
走行時には服装や靴にも要注意。ハイヒールなどはバランスを崩しやすいので、動きやすい靴がベター。また、ロングスカートは車輪に裾が巻き込まれる恐れがあるので、動きやすい服装を心がけましょう。
また、雨の日はブレーキが利きにくくなります。天気の悪い日はより注意して走行してください。
まとめ:電動キックボード初心者や座って楽に移動したい人におすすめ

今回「座って乗る電動シートボード」を利用してみましたが、座ったまま移動できるのが本当に楽で感動しました。まさに、原付バイクに乗っているような感覚。また、実際に動き出すと振動やブレをほとんど感じず、非常に安定していたことにも驚きました。それも、最初に感じた車体の重さがあるからこそなのだと思います。
タイヤが小さいと段差を乗り上げられなくて転んでしまうような事故が起こりがちですが、「タイヤは当社従来比で150%大きくなっています」とLime広報担当者。またタイヤにしっかり空気が入っているうえ、サスペンション(タイヤとボディの間に位置して車を支える機構で、路面の凹凸や段差から発生する衝撃を吸収する役割がある)がマウンテンバイク並みで、振動が低減されているのだといいます。
Limeは補償や保険に手厚く、車両の安全性にこだわっているため、安全面で心配な人に特におすすめです。電動キックボードが気になっているけれどまだ乗ったことがないなら、Limeはそのデビューに最適なサービスではないかと感じます。