スマホやノートパソコンなどのバッテリーとして利用されているリチウムイオン電池について、「バッテリーを充電する際は、一度空にしてから充電した方がバッテリーの寿命が長くなる」という話を耳にしたことはないだろうか。
いつどこで耳にしたのかは定かではないが、筆者もバッテリーを充電する際はいったん空にした方がよいと思い込んでいた。空ではない状態で充電することに心苦しさを感じていた人も少なくないだろう。
このことに関して、Google+のコミュニティ Appllio+ において、
という記事とともに
というコメントが共有された。
そこで、この記事では、その疑問に答えるため、リチウムイオン電池の寿命について調べたことを整理しておきたい。
「バッテリーは空にしてから充電した方が長持ちする」はウソ、は本当なのか?
lifehackerの記事が翻訳・引用する「Battery University」によれば
機械系のデバイスはどれも同じようなもので、使えば使うほど早く消耗していきます。また、放電深度(バッテリーの放電状態の数値)によって、寿命までのサイクルが決まります。放電深度が小さければバッテリーはより長持ちします。よって、バッテリーを使っている間は、空っぽの状態をできるだけ避けた方がいいです。バッテリーが少しだけ減っているような状態は問題ありません。自然と放電して充電メモリが無くなるといった場合以外に、定期的にバッテリーを空っぽにする必要はないです。
実は「バッテリーは空にしてから充電した方が長持ちする」はウソだった(lifehacker)
とのことだ。
しかし、筆者はこの記事を読んで内容がスッと頭に入って来なかった。読者としては、リチウムイオン電池の寿命が短くなってしまう具体的なケースとリチウムイオン電池の寿命を長持ちさせる方法を、分かりやすい文章で簡潔に知りたかったからだ。
リチウムイオン電池の寿命が短くなるケース
では、どのような場合にリチウムイオン電池の寿命が短くなるのだろうか?
TDKがバッテリー劣化に関して解説した記事によると、リチウムイオン電池の寿命が短くなるのは以下の3つの場合だ。
- 電極自体が劣化する場合
- バッテリーパックに内蔵された調整用コンピュータの精度に狂いが発生する場合
- バッテリーパック内のセルバランスが崩れる場合
それぞれの場合について簡単に説明する。
なお、リチウムイオン電池にはメモリー効果はほぼ無いと考えられており、ニッケル水素電池やニッカド電池のように継ぎ足し充電によって寿命が短くなることはないと言ってよい(寿命が短くなるという表現は不正確だが、ここでは説明を省略する)。
1. 電極自体が劣化する場合
電池の電極は、熱を加えられることや充電されることで劣化していく。
したがって、夏場に車のダッシュボードに放置しているような場合、バッテリーの劣化が急速に進む。
また、残量がある状態での充電する場合や職場や家庭内で常に充電する場合のように頻繁に充電を行うことでもバッテリーの劣化が進行する。
2. バッテリーパックに内蔵された調整用コンピュータの精度に狂いが発生する場合
まず、「過充電」と「過放電」について簡単に説明する。
- バッテリーをフル充電した後に充電し続けた状態が「過充電」。過充電状態のままでは、バッテリーが劣化してしまう。
- また逆に、電池残量が0%のまま長期間放置しておくと「過放電」状態となり、充電することができなくなる場合がある。最近では、小惑星探査機「はやぶさ」が小惑星イトカワから帰還する際にバッテリーの一部が充電能力を失った事例が記憶に新しい。
このような過充電と過放電を防止するために、スマホなどに使われているバッテリーの内部には調整用のコンピュータが搭載されている。よって、通常の利用方法では過充電・過放電に陥ることはまず無い。
しかし、普段、スマホなどを使っていると次第にこのコンピュータの精度に狂いが発生し、フル充電することができなくなる場合がある。
この場合には、フル充電状態から一度完全に放電して電池残量を0%にすることでコンピュータを再調整できる(もちろん、過放電に注意しなければならない)。
3. バッテリーパック内のセルバランスが崩れる場合
リチウムイオンバッテリー内部はセルと呼ばれる小部屋に分かれている。セルが1つの電池で、バッテリーはそれらが複数個まとめられているモノだと考えれば分かりやすいだろう。
セルのうち1つがフル充電されると、充電器は他のセルがフル充電されていなくても充電完了と判断し充電を終了する。セルごとにフル充電されるタイミングが異なるのは、セルごとに放電するスピードが微妙に異なるため。それゆえ、充電と放電を繰り返すことで、次第にセル同士のバランスが崩れていくことになる。
リチウムイオン電池の寿命を長持ちさせる具体的な方法
以上のことからリチウムイオン電池の寿命を長持ちさせるためには、次の2点1点に気をつければよい。
- 高温環境に放置しないこと。
フル充電した状態からできるだけ使い切り、充電回数を減らすこと。
また、長期間スマホやノートパソコンを使用しない場合は、ある程度バッテリー残量を減らし、バッテリーを本体から外した状態で、高温にならない涼しい場所で保管するとよい。例えば、Appleは「ノートブックコンピュータを6か月以上使わない時は、バッテリーを50%充電した状態で保管する方法をお勧めします」とHPで説明している。各メーカーによって、長期保管の場合の説明は若干異なり、いずれが正解とは言いづらいところがある。使用している製品に関する説明書などを確認してみるとよいだろう。
結論
たしかに、リチウムイオン電池にはメモリー効果がほぼないことや空にしたままの状態だと過放電になりうるといった観点からは、バッテリーを空にしてから充電したからといって長持ちするとは言えない。
しかし、充電によって劣化が進むという観点からは、できるだけバッテリーは使いきってから充電する方が寿命を短くせずに済む。結局のところ、リチウムイオン電池において「バッテリーは空にしてから充電した方が長持ちする」はウソ、と単純に言うことはできず、むしろ誤解を招く表現であるというのが冒頭の「そうなの?」という疑問に対する筆者からの回答だ。
※補足説明あり
※なお、前述のlifehacker記事の引用文中に「自然と放電して充電メモリが無くなるといった場合以外に、定期的にバッテリーを空っぽにする必要はないです」とある。メモリー効果に関する説明と混同してしまいそうになるが、おそらく「充電メモリが無くなる」=「充電目盛りが無くなる」=「電池残量が0%になる」という意味だと思われる。
【追記】
上記引用文「自然と放電して充電メモリが無くなるといった場合以外に、定期的にバッテリーを空っぽにする必要はないです」について。
米lifehackerの原文を確認したところ、ライフハッカー日本版の誤訳のようだ。
正しくは「リチウムイオン電池にはメモリー効果がなく、バッテリーは残量ゲージの調整(※)以外に定期的な完全放電を必要としない」という文意である。
※本記事中で説明した調整用コンピュータの再調整のこと
本記事全体についての補足説明
本記事の掲載後、読者からの指摘があったことを契機に更にリチウムイオン電池について調べたところ、当初参考にしたTDKのHPの説明が本記事に適した説明なのか疑問が生じた。そこで、再度簡単に説明したい。
そもそも、リチウムイオン電池の劣化メカニズム自体が完全に解明されているわけではなく、ここ1年でも次のような報道がある。
現時点で筆者から、かなりの確度で言えるのは
- 高温状態だとバッテリーの劣化が激しい
- フル充電に近いほどバッテリーは劣化しやすい
- 充電・放電を繰り返すことで劣化していく
- ただし、どの程度の充電と放電を繰り返すのかによって大きく影響されるため、単純に充電と放電を繰り返す回数を計測することはあまり意味がない
- つまり、残量を考慮することなく「500回使うと60%まで劣化する」というようなことは言えない
ということだ。
したがって、スマホやノートパソコンの一般的なユーザに対してリチウムイオン電池の寿命を長持ちさせる方法として提示できるのは、「高温ではない状態で、かつ、あまり充電されていない状態で機器を利用する」という方法だ。
とは言うものの、そのような使い方は現実的ではないだろう。ほとんどのユーザにオススメできるのは「外出時は普通に使って、自宅では普通に充電し、会社などでは必要に応じて充電する」という方法だ。身も蓋もない結論だが、要はあまり高熱になるような使い方を避けつつ、適度に充電して、普通にスマホやノートパソコンを使えばよいということだ。
lifehackerの記事タイトルについて
発熱を避ける観点からは、無駄な放電を行なって「バッテリーは空にしてから充電」することは寿命を縮めることになるため、「バッテリーは空にしてから充電した方が長持ちする」とは言えない。その意味ではlifehackerの記事タイトルは正しい。
しかし、バッテリーを空にすること自体が、通常の利用方法よりもバッテリー劣化を促進することにはならない。むしろ、フル充電に近いほどバッテリーは劣化しやすくなるため、50%から100%の充電・放電を繰り返すよりも0%から50%の充電・放電を繰り返す方が寿命を縮めにくいことになると考えられる(発熱を抑え、できるだけ寿命を長持ちさせるためには30~80%の状態を維持することが望ましい)。
よって、上でいったん取り消し線を引いたものの、結論自体は変わらない。
リチウムイオン電池において「バッテリーは空にしてから充電した方が長持ちする」はウソ、と単純に言うことはできず、むしろ誤解を招く表現であるというのが冒頭の「そうなの?」という疑問に対する筆者からの回答だ。
最後にlifehackerの記事の締めの一文を引用して、この記事の結論としたい。
「バッテリーに関する正しい知識を仕入れて、快適なバッテリーライフを送りましょう」
lifehackerの記事に対するWeb上の反応
自分もウォークマンでニッケル水素電池を使ってたのでついついギリギリまで放電したくなりますが
そこにカバーケースするからさらに放熱を邪魔してる。
深放電状態(0%)だと劣化します(話題になったのだとはやぶさのロストからの復帰時の状態もそう)
逆に100%状態でずっとも劣化します。高密度にかなり大きいエネルギーを詰め込むので…
スマートフォン的には30-80%状態で維持するのが一番へたれなくなると言われてます。それとは別に、電池状態監視する回路やOSのログが電池の実体状態とずれてくる場合もあるので、一回0にして100%充電を数回繰り返してあわせるってのもあるので、アプリはこれを狙っていると思われます。
(リチウムイオン電池は出力電圧とかから残量予測が難しいのです)
ちなみに最近の研究で、ほとんど誤差だけどリチウムイオン電池にもメモリ効果はあるってのもわかったってニュースを先々週くらいにみました。
1. 電極自体が劣化する場合
電極の劣化 = Li-ion電池の劣化
充放電回数(空~満充電換算で、浅い充放電はその分 0.x回と考えて)と、その充放電回数含めた熱
→よって、40℃以上や密閉された状態(風呂の中でジプロックで使用や車のダッシュボード上等)での充放電での自己発熱がもっとも寿命を縮める。充放電の深さとは別。
→動画再生など盛大に電力を使いつつ充電するケースは、以前ガラケーではするなとの指示もあったが、ちゃんとした現在のスマホでは問題ないはず。但し、旧規格の USB 500mAではなく 1A以上を受けれる機器は、機器の動作(動画再生等)で電力を食って発熱し、さらに、大目の余電流で充電にて発熱して、トータルでの温度上昇が大きくて、Li-ionの寿命に若干響くケースは有りえる。
→一部充電制御が未熟な機器は、動作で食ってる電流を充電電流と分けることができず、結果、充電を止めるべき条件でも充電し続けることになるようなものもあるかも。
2. バッテリーパックに内蔵された調整用コンピュータの精度に狂いが発生する場合
→寿命とはおそらく関係ない部分。
a.バッテリーパックに内蔵された過充電・過放電防止のプロテクト回路は、ちゃんとしたメーカー製の場合非常に精度と信頼性がいい。
b.実際の充電の制御はバッテリーパック内のプロテクト回路では無く、本体内の充電 ICが詳細に制御。これも狂う可能性はほとんど無い。
c.バッテリー残量表示と、充電コントロールはまったく別。残量表示と関係なく、物理的にワッチしながら充電している。
d.残量表示は履歴管理も含めたコンピューターによる演算。これは狂いが生じる。ノートPCではリセット/再学習するプログラムがついている。Androidでは、履歴の書かれたファイルを削除すれば(root要)再学習される。電池を外しても再学習されるらしい(?要確認)。
e.実使用で過放電は起こらない。Li-ionは 2.7や 2.4V等かなり低い電圧まで使えるが(それ以下が過放電)、スマホ等は 3.3Vや3.6V辺りで使用を止めており(内部回路上の理由より)、そこが 0%になっているため。但し、その状態辺りで放置すると、スマホ等の内部回路の若干(若干でないものも有って、それは寿命上やばいね~)の電流により過放電(バッテリー内部のプロテクターが切ってくれる)に達することはある。なお、このプロテクターがかかると、次回充電(の本格)開始に時間がかかる。
f.過充電も、現在の回路ではまず起こらない。よほどの中華PADでもない限り。但し、過充電ではないが、特にノートPCなど直列に多セルとなってるものは、全セルがバランスして満充電させる方法にいろいろ差異や若干の負担が有り、この手前であることと充電を浅くする双方の目的から 80%までで充電をとめるのを Log Lifeのモードとして持ってるものも有り。
3.. バッテリーパック内のセルバランスが崩れる場合
上記 f.のケース(スマホでは関係ない。)
よって、
A.スマホ/Tablet(1セル) は、自己発熱含め高温としないこと、特に充放電時、また0%辺りで放置せず充電しておくこと。
B.PC等(多セル)は、できれば 80%辺りで充電を止める機能で、充放電を深くしすぎないようにしながら使えば OK。もちろん、熱には気をつける。
(追記)双方、容量がおかしいと感じたら、可能な場合は履歴のリフレッシュ(再学習)を。スマホは電池一度外してみるのも可能性有り。
※毎日、会社でも家でも充電して、気にせずつかって2年程度では大きな劣化したことは無いなぁ。中華 PADや安モンのノートPC以外は今はかなりいいと思う。
P-905iで毎日 30~40%まで 2回充放電を繰り返して 2.5年でやっと劣化を感じた程度。HT-03Aも、2年間毎日 2~3回同様に充放電して、2年近くもったし、今のSO-02Cも同様、、、PCは Let's noteは 5代使って劣化は初代と 4代目で2.5年で感じたかな。家の古い DELLは 2代とも 1年弱、今の NECのは1年ちょいでまだ大丈夫のよう。
https://plus.google.com/u/0/100297729386759646668/posts/NxWpw3AbBie
※Google+の専用コミュニティにおけるコメントをまとめて記事にしています。興味のある方は、コミュニティ Appllio+ に是非ご参加ください。