今年の夏大ヒットした『インサイド・ヘッド2』も記憶に新しいですが、同シリーズの最新作がディズニープラスに登場です。人の感情を擬人化したこの作品では、人の頭の中を覗くような面白さがあり、感情がいかにして人の脳の中で作られているのかを楽しく学べる側面もあるユニークな作品です。
そんな『インサイド・ヘッド』シリーズ初の配信作が、4話構成のミニシリーズ『ライリーの夢の製作スタジオ』です。本作は『インサイド・ヘッド』1と2の中間の時期、主人公・ライリーが11歳の頃の物語で、感情コントロールセンターとは別にある、ライリーが眠っている時に見る夢を製作しているスタジオで働く感情たちを描いた作品です。
子供の頃にライリーが喜んだのはメルヘンな夢でしたが、成長するにつれて見る夢も変わっていくもの。そんな夢作りの現場をハリウッドの映画スタジオに見立てて、日夜ライリーを喜ばせようと頑張っている感情たちの物語です。
人の夢は映画のように作られる?
ライリーは11歳になり、初めて学校のダンスイベントに参加しようとする年頃になりました。しかし、男子を誘うのは恥ずかしいし、どんなドレスを着ていけばいいかもわからない。そんなライリーの背中を押してあげたいと、夢の製作スタジオはライリーの決断を促す次回作の夢の企画を作ろうとしています。
ここで長年働くポーラは、かつてライリーが小さかった頃、虹のユニコーンの夢で人気を博し、有名監督としての地位をほしいままにしています。しかし、最近はセンスが古くて幼稚っぽいと思われ始めていました。かつての成功体験から抜け出せずにいるのです。
ある日、ずっとポーラの下で勤めていた助監督が監督に抜擢、ポーラは挽回しようとするのですが、手痛い失敗をしてしまいます。そして、新たに前衛的なアート志向の監督・ゼニとコンビを組まされることになるのです。
ライリーにはハッピーな夢を見せてあげたいと主張するポーラに対して、前衛的なよくわからないネタを指向するゼニの2人は相性が合わずに、いつも現場で喧嘩してしまうのです。その結果、夢はめちゃくちゃになり悪夢をライリーに見せてしまうこともしばしば。失敗続きでポーラもゼニも干されてしまう中、夢の製作スタジオの上層部は受けるネタを出せとしか言いません。果たして、本当にライリーのためになる夢とはどんなものか、ポーラとゼニは自問するのです。
夢作りを映画作りになぞらえる本作発想は、とてもユニークかつ納得感があります。ハリウッドを「夢工房」というように、人が思い描く空想や理想を具現化できるのも映画の素晴らしいところ。そんな映画スタジオがみんなの脳内にあるということが「夢」のある話です。
しかも、夢作りに携わっている感情たちの葛藤には、クリエイターとしての葛藤もリアルに描かれています。この辺りはピクサーも映画スタジオですし、同じクリエイターとして、自分たちの実感も込められているのかもしれません。
リアリティを感じるのは、この作品が疑似ドキュメンタリー的な演出をしている点も大きいでしょう。「人気監督に密着」的な番組風に演出されていて、ポーラのことを一台のカメラが追いかけて、それに対して自らの仕事のスタンスを語ったりといったシーンがよく見られます。自分の脳内にもこんな連中が毎日頑張ってくれているのかなと思わせてくれる、心憎い演出です。
ヨロコビたちも登場
夢は深層心理の表れとよく言われます。それに人間の人生は4分の1くらいの時間は睡眠です。その時間に見るものは、人間にとって影響は決して小さくないでしょう。
本作では、ライリーが前向きな決断をできるようにと、夢の内容を考えているという設定です。一方で、ポーラやゼニたちはクリエイターとしてのこだわりやエゴも持ち合わせているのが面白いポイント。作り手の作りたいものが、観客にとって見たいものとは限らないのは、現実の映画製作でも同じこと。映画(夢)は誰のために作るべきなのか、という問いかけを含んでいるのです。
ちなみに、本作にはヨロコビなど映画『インサイド・ヘッド』でお馴染みのキャラクターも登場します。お馴染みのキャラクターも見られて、家族みんなで楽しめるピクサーアニメーションの良さが詰まった一本です。
『ライリーの夢の製作スタジオ』を見る(ディズニープラスで配信中)
『インサイド・ヘッド』と『インサイド・ヘッド2』の間のできごとを描く『ライリーの夢の製作スタジオ』は、ライリーの頭の中にあるスタジオを舞台にした新しいシリーズだ。そのスタジオでは毎晩、時間通りに、予算内で、夢を形にしている。成長していくライリーの思い出に特別な処理が必要になると、ヨロコビや他の感情たちはその思い出を夢の製作スタジオに送る。スタジオでは、著名な夢監督ポーラ・パーシモン(ポーラ・ベル)が悪夢に直面する。うぬぼれた白昼夢の監督ゼニ(リチャード・アイオアディ)とコンビを組んで、次のヒット作を作らなければならないのだ。ゼニは夜の夢の世界へのステップアップを狙っていた。ピクサー・アニメーション・スタジオによる愉快なドキュメンタリー風のこのシリーズは、マイク・ジョーンズが脚本と監督を、ジャクリン・サイモンが製作を担当している。
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