先日、3Dプリンタを使って制作されたフィギュアが編集部に届けられた。フィギュアの元になったのは筆者がソーシャルアカウント用のアイコン画像として利用している自作イラストだ。
近年、低価格化によって個人向けとしても注目を集め始めている3Dプリンタとは、紙に印刷する通常のプリンタと異なり、3Dデータから立体を造形するデバイスだ。
3Dプリンタを見たことがなければ、以下の動画をチェックしてみてほしい。どういうものなのかすぐに分かるだろう。
このフィギュアが筆者の下に届けられるまでの経緯が、まさに現在のWebの中で日常的に発生していて、かつ、奇跡的である「つながり」を象徴しているものであり、これこそがモノ作りの未来になるかもしれないことを肌で実感させられるものだった。そこで今回、SNSの中でのコ・クリエーション(共創)の1事例として紹介したい。
3Dプリンタによるフィギュア化に至った経緯
なぜか今、ここにフィギュアがある現実が、筆者にとっては衝撃的だ。
このフィギュアは、筆者とSho Baba氏とHitoshi Mitani氏の合作。
筆者とBaba氏、Mitani氏はGoogleのSNS「Google+」で知り合った仲だ。我々3人は実際に会ったこともなければ、Skypeなどで会話したこともない。
Google+における「つながり」の中のみで、テキストと画像・データを交換し、結果的に相手のクリエイティブな感性を刺激したことによって、このフィギュアは誕生したのだ。
1. アイコン画像を描く
まず、筆者がソーシャルメディアなどのアイコンとして使用するためにイラストを描いたのが2012年6月のこと。現在、TwitterやGoogle+のアイコン画像として利用している。
なぜ、Googleが本気を出したはずのSNS「Google+」は流行らないのか?「AKB色を全面に出したのが大失敗だと思う」というユーザの声 dlvr.it/3HXmQC @appllio
— ac@アプリオ編集部さん (@airchair3) 2013年4月26日
その後、多少の変更を経たアイコン画像がMitani氏の目に留まることになった。
2. アイコンをドロイドくん化
Mitani氏は、以前からAndroidスマホのマスコット「ドロイドくん」のフィギュアなどを制作しており、Google+上で人気を博していた。
そのMitani氏が、筆者制作のアイコン画像をミックスさせたドロイドくん画像を創作し、2013年3月26日にGoogle+上で共有した。
3. 3Dモデル制作
その画像をストリーム上で見かけたのがCGクリエイターのSho Baba氏。筆者のアイコンについて「可愛いキャラだなぁと思ってたんです。アニメか何かのキャラだと思ってました」と語るBaba氏は、Mitani氏制作の画像を見て3Dモデル化を決意し、3月28日には3D画像を制作し終えた。
なお、頭部以外の部分はBaba氏の完全オリジナル。でっぷりしたお腹まわりが無性に可愛い。
4. 3Dプリンタでフィギュア化
その後、Baba氏から3D CADの標準的なデータ形式であるSTL形式で出力されたファイルを受け取ったMitani氏は、友人所有の3Dプリンタを使用して立体物を造形し、画像のようなフィギュアに仕上げていく。
その件を全く聞いていなかった筆者は、4月16日にMitani氏が公開した上の画像を見て、初めて立体化プロジェクトが進行していたことを知った。
そして4月21日に、編集部あてに完成したフィギュアが到着した。以上が、今回のフィギュア事件の簡単な経緯である。
ソーシャルと共創と奇跡
インターネットとソーシャルメディアによるコミュニケーションコストの激減、個人が手軽に扱うことができるCG制作ソフトウェアの存在、そして3Dプリンタの登場と低価格化などによって、このフィギュアが僕の目の前でリボルテック・ダンボーと並んで立っている。
筆者は、これは奇跡だと思う。それと同時に、この奇跡が日常化していくのかもしれないと感じている。3Dプリンタの話題は知っていたし多少興味もあったが、どこか遠い世界の話のように考えていた。だが、何気なく描いたイラストがフィギュアになって手に取ることができる不思議な感覚を味わった今、この偶然の果実をたくさんの人々にも享受してほしいとさえ思うようになった。
Webを通じたコラボレーションという視点からは、近年のニコニコ動画における初音ミクの事例が有名だ。音声合成ソフトの存在によって自由な歌い手を手に入れた作曲者と、その楽曲に勝手に映像をつける絵師・動画制作者、ニコニコ動画のようなプラットフォームのコラボレーションは、20年前にはそうそう起こりえなかった奇跡だ。そして、この奇跡が、この5,6年で日常化した。他にも事例はいくらでも挙げられるだろう。
今回のフィギュア誕生は、コラボが全てGoogle+というSNS上で行われたこと、そしてコラボの成果物が3Dプリンタを利用した物体としてのフィギュアであることに関しては、目新しい事例なのではないだろうか。
このフィギュア事件の衝撃は、あくまで筆者個人の体験に基づくため、読者が同じ感動を共有するのは難しいのかもしれない。おそらく以前の筆者なら、このような事例を知ったとしても余り興味を抱かなかっただろうから。しかし、少しだけ想像してみてほしい、自分が描いたイラストがフィギュアになって部屋に飾ってある光景を。
Web上の反応
SNSでのやり取りだけで一つのものが完成する。もの作りにおけるいろいろな概念を変えてしまうかもしれない。
これからが楽しみです
誰かが作ったものに他の誰かが新しい価値を加え、そしてまた他の誰かが・・・の相乗効果。そうして誰もが思ってもみなかったようなステキなモノたちがいくつも生み出されてきた。
初音ミクの台頭について、とある掲示板での書き込みの受け売りですが、過去のSF作品においてバーチャルアイドルなるものはたくさん登場してきた。
しかし、それらはみんな国家や大企業が作り上げ、トップダウン式に民衆にもたらされたものであるのに対して、初音ミクのムーブメントは、一般の在野のクリエイターたちがマッシュアップし盛り上げてきた、ボトムアップ型の文化である。
これはいままでどのSF作家でさえ予想だにしていなかった。
初音ミクが、ひいては現在のインターネットがどれだけ世界を変えたか。既成の価値観の破壊を起こしたか。その影響は計り知れないと思います。
ボクは、本当に今の自由なインターネットが大好きです。既得権益者や時の権力者は何かと規制を行なおうと必死ですが、この自由な世界がいつまでも続くことを願ってやみません。
あ、あともう一言。
Google+もそういう場であってほしいなと。
幸いここは他のSNSに比べいろんな分野のクリエイターさんが多いと感じますし、そうでなくても全く見ず知らずのひととも深く交流できるシステムだと思いますので、もっともっとこういう化学変化を起こしていって欲しいですね。
私はAndroidアプリを作っていますが、そのアプリのリリースとほぼ同時期にそのアプリのサークルをGoogle+に作りました。理由は、利用者との対話の機会がGoogle Play上でほとんどできないからです。
結果、数名の強力なファンを獲得できました。これらの人は、毎日のようにアプリをいじってくれて、こうした機能がほしい、ここにバグがあると報告をしれくれるようになりました。
それから、アプリ内の背景画像を変更できる機能をつけたところ、背景画像を作って提供してくれる人もあらわれました。現在はアプリの機能を説明する動画を作ってくれている人もいます。
>20年前にはそうそう起こりえなかった奇跡だ。
ソーシャルメディアの登場により、20年前には出会えなかった人と出会うことができるようになりました。私は人と人が出会ったときの化学反応が非常に好きなので、Google+のつながりで現実に会ったりすることもあります。
>筆者は、これは奇跡だと思う。それと同時に、この奇跡が日常化していくのかもしれないと感じている。
私も日常化していくとおもいます。このときに非常に重要になってくるのが、仮想現実上での信用性だと思います。ソーシャルメディアでの発言などは、全ての人に公開することになります。なので、現実での振る舞いと同様に言葉を選ぶ必要が出てくると思います。
ただ利用をしていく事で人格が確かにそこに確かに形成されていきます。そしてハッシュタグやコミュニティを通じて新しい世界も広がります。
たしかにPCやスマホなどを通したバーチャルではありますがモニターの向こうには確かに人が居る。SNSとはそういうつながりを形成する比較的新しくはありますが技術なのだと思います。
Google+は何かに特化したSNSではありませんが、様々な要望に応えられる懐が深いSNSなんだなと感じています。
プラス思考で、いい関係が作れるのがベストですが、怖い面もありますね。
誰かが自分の権利を声高に叫び始めてしまうだけで、一気に自由度が下がってしまうから。
パブリックドメインまで自由にしろとは言わないけれど、CC程度の自由度が有ると発展的で楽しい。
https://plus.google.com/u/0/113592870640571213712/posts/S8tz9HDcZGY
※Google+の専用コミュニティにおけるコメントをまとめて記事にしています。興味のある方は、コミュニティ Appllio+ に是非ご参加ください。
オススメ書籍
3Dプリンタ技術は今後、個人レベルだけではなく国家レベルでも重要な技術として世界的にクローズアップされてくるであろう。今年の米オバマ大統領の一般教書演説において、製造業復活のための切り札として3Dプリンタ技術が大きく取り上げられていた。アメリカの国家戦略に取り入れられていることにも、今後の3Dプリンタ技術の重要性が示されていると言えるだろう。
この3Dプリンタ技術などを中心とした製造業の未来を占う1冊としてオススメするのが「MAKERS―21世紀の産業革命が始まる」だ。著者は、前作「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」が大ヒットしたクリス・アンダーソン氏(米WIRED誌 編集長)。今回の記事に少しでも興味があれば一読しておいて損はない。