ソフトバンク、イー・アクセス買収で「繋がるキャリア」になれるか

2012-10-01 18:40

softbank

ソフトバンクは10月1日、イー・アクセスの買収を発表した。株式交換によって2013年2月に完全子会社化する。これにより、国内携帯電話累計契約数で、シェア2位のKDDIに肉薄する。

ソフトバンクが欲しかったもの

しかし、ソフトバンクがイー・アクセス買収で得たかったのは、回線契約者ではないだろう。

同社が本当に欲しかったのは、イー・アクセスに割り当てられている電波周波数だ。

ソフトバンクが通信面で競合他社と比較した場合、依然として苦しい状況にあることはこれまでにも指摘されていたところだ。

参考:iPhoneもLTE対応に、「通信速度が速くて電波がつながる」キャリアは?

その大きな理由は、ドコモやKDDIと比較して割り当てられている電波の周波数帯が狭く、その少ない資源を急増するユーザーに対応してギリギリのところでやりくりしてきたために、計画的な周波数利用が難しく、対応が後手に回ってきたことによる。

iPhone5発表後、テザリングや通信制限を巡って対応が二転三転してきたのも、この苦しい電波利用状況とサービス向上を求めるユーザーとの間で、どこに落とし所を持って行くのかで苦心したためであろうことは想像に難くない。

この状況を打開する何よりの特効薬は、利用できる周波数帯を増やすことであり、そのためのイー・アクセス買収だと思われる。

イー・アクセス買収でソフトバンクは繋がるようになる?

ユーザーとしては、イー・アクセスを買収することで、ソフトバンクの電波が繋がるようになるのか、速くなるのかが気になるところだ。

結論から言えば、もし買収できたとすれば、将来的には電波状況が改善し、ドコモやKDDIに引けを取らない「繋がる速い」キャリアになることができそうだ。

イー・アクセス割り当ての帯域

イー・アクセスはドコモやKDDIと同様に、プラチナバンドである700MHz帯に10MHz帯×2の帯域を持っており、LTEを展開予定。そこに、ソフトバンクが既に持っていた900MHz帯のプラチナバンド帯域30MHz分と合わせれば、ソフトバンクは合計50MHzもの帯域をプラチナバンドで持つことになる。

さらに、イー・アクセスは、LTEや3G通信サービスを提供中の1.7GHz帯を持っている。

iPhone5で使える?

このうち、1.7GHz帯で提供している「EMOBILE LTE」はiPhone5が対応している周波数なので、イー・アクセスがソフトバンクにこの周波数を提供する場合、iPhone5は2.1GHz帯とのデュアルバンドでLTEを利用できることになる。

ソフトバンクは、3Gとの併用により、LTE化が難航しそうな2.1GHz帯のみでのテザリング運用が相当厳しいと思われていた。それだけに、もしこのLTEで整備が進んでいる帯域をiPhone5でも利用できるとなれば、対応エリアも拡がり、回線に余裕も生まれるので、ユーザーにとっては福音となるだろう。

課題は既存ユーザーをどうするか

問題は、既存のEMOBILEユーザーとどう住み分けるのかという点だ。

まだ更地で2015年度からサービス開始予定だった700MHz帯を実質ソフトバンクユーザーのために振り分けることに関しては、あまり問題は生じない。だが、既存のユーザーがいる1.7GHz帯に対して、イー・アクセスの8倍弱もいるソフトバンクユーザーが流入すると、脆弱なインフラはすぐにパンクしてしまうだろう。

当然、しわ寄せは既存のイーモバイルユーザーに向かってしまうことになる。

もちろん、そのようなことはできないので、インフラ整備を進めつつ、徐々に融合を図っていくことになると思われるが、それにはしばらく時間がかかるだろう。

あとは総務省が了とするか

最後の問題は、電波周波数を管理する総務省が今回の買収に対してどのような反応をするかという点になる。

総務省は、主要キャリア4社に対して、利用者数や次世代通信サービスの展開状況に合わせて周波数の割り当てを行ってきた。
しかし、今回の買収劇で、この状況が大きく変わってしまうことになる。

まず、現在検討が進められていた1.7GHz帯にある空き帯域の割り当ては、隣り合う帯域を持つイー・アクセスが有力と見られていたが、これは再検討になる可能性が高い。

単純に周波数割り当てだけで見れば、ソフトバンク+イー・アクセスが突出した帯域を確保するわけではなく、利用者数の比較から見れば許容範囲内だとも言える。

しかし、かねてより新規参入を促し、キャリア3社体制からの脱却を目指していた総務省だけに、再び3社に戻ってしまう状況をどう見るだろうか。

ソフトバンクユーザーにはメリット大

いずれにせよ、今回の買収が承認され、周波数割り当てなども現状が維持されるならば、ソフトバンクユーザーにとってはメリットが大きそうだ。

とにかく通信面が弱点だった同社だが、少なくとも電波の面での条件は競合と対等になるため、基地局整備などでしっかりとしたインフラ整備が進めば、もう「繋がらないソフトバンク」とは言われなくなるだろう。

プラチナバンドとiPhone5が使えるLTE帯域に加えて、基地局等のインフラも手に入るとすれば、2000億円は安い買い物だったと言えるのではないだろうか。