Androidの電子書籍「第1世代」の登場
発行部数250万部突破の大ヒット書籍「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(岩崎夏海著・ダイヤモンド社刊)が、Android向け電子書籍アプリ「もしドラ」としてリリースされています。
公立高校野球部の女子マネージャーが、経営学の父とも言われるドラッカーの名著『マネジメント』を読んで、仲間達と甲子園を目指すという青春小説。2010年のトップセールスとなった人気ぶりや映画の公開など、中身に関してはすでにお墨付きでしょう。
アプリオでは、この「もしドラ」アプリを、Androidで電子書籍を読んでみたいと考えている人への最初の1本として推薦。
内容の面白さにとどまらず、本アプリに採用されている電子書籍ビューアBookPorterに、今後しばらくはAndroidにおける電子書籍ビューアのスタンダードになっていくのではないかと思われるほど、読みやすさ、使いやすさで一歩進んでいる印象を受けるからです。
BookPorterとは
「Book Porter」は、本アプリの配信元であるダイヤモンド社とエンジニアの高山恭介氏が共同で独自開発した電子書籍ビューア。2010年4月にまずiOS版を開発し、今年4月にはAndroid版もリリースした。
「もしドラ」の担当編集者で、同社書籍編集局の加藤貞顕副編集長は、Android版アプリに搭載したBookPorterの開発について、こう振り返ります。
「すでにBook Porterを用いた電子書籍アプリをiPhone版でリリースしていたので、今回はそれをベースにAndroid版へ移植しました。操作性や動作速度に優れており、他の出版社さんもこのBook Porterを利用してくださったりしているくらいです。Androidは様々なデバイス(端末)が存在するので、どのデバイスでもきちんと読めるようにすることに腐心しました。ビューアがお粗末なためにストレスとなり、読むのを止めてしまう不幸な状況だけは避けたかったのです」
筆者も今回、Xperia(Android2.1)およびGalaxy Tabの2つの端末で試してみましたが、軽快で滑らかにページをめくることができ、ボタンをタップした時もすばやく反応するなど、いずれもストレスなく動作しました。
また、好きな一節を選んでマークしたり、しおりを挟んだり、文字サイズや行間、背景色を変更したり、文字をタテ組み/ヨコ組みに変えたりと、機能は多彩でありながら、操作はシンプルで使い勝手のよいものになっています。
きめ細かいUI(ユーザーインターフェイス)の追求
デザイン面を中心に、アンドロイド版「もしドラ」の開発に携わったのは、書籍編集局の常盤亜由子さん。
Book PorterをiPhoneから移植したものの、実際に使うのは当然、Androidユーザー。iPhoneのままにならないよう、Androidらしさをどう出していくか模索したといいます。
「例えばボタンのデザイン1つとっても、Androidらしさってありますよね? こうした細部にわたっても、Androidらしさって何だろうと考え続けていました。iPhoneのいい部分も踏襲しながら両者の統一感を保ち、Android版の読者にとっての最適なUI(ユーザーインターフェイス)を探っていきました」
実際はほとんど気づかれない部分かもしれませんが、読者目線に立ったきめ細かい追求は、まさに編集者ならでは。こうした部分が、Book Porterの読みやすさ、使いやすさを陰で支えているのではないでしょうか。
絶妙な価格で受け入れられるか
さて、Android版「もしドラ」の価格は800円です。一般的な有料アプリとして考えると、Androidの相場からはちょっと高い気もします。
価格の設定について、書籍編集局の今泉憲志局長はこう明かしています。
「読者の方に分かりやすいように、iPhone版でもAndroid版でもすべて同じ価格にしています。紙の書籍の半額ですので、かつての電子書籍は紙の書籍と同価格で販売していたことなども踏まえると、出版社としては頑張っているほうかと思います。高すぎず安すぎず、1000円以上にはしたくない。そのような感覚で設定しました」
アンドロイドマーケットの状況に目をやると、「もしドラ」は好調なダウンロード数で推移しており、概ねユーザーには受け入れられているようです。確かに、紙の書籍の半額と考えると、800円はそう敷居が高くないような気もします。
電子書籍との最初の出会いに
まだ発展途上の領域なので仕方ないことではありますが、これまでAndroidの電子書籍は、コンテンツはよくても、いまいち使い勝手のよくないビューアで、「残念」なものが少なくなかったように思います。
しかし、このBookPorterによって、読みやすさの基準となる「第1世代」が、いよいよ登場してきたのかもしれません。
加藤副編集長や常盤さんも、こう口を揃えます。
「今、これだけ『もしドラ』に注目していただいているなか、多くの方が電子書籍に興味をもってくださるタイミングで、アプリをリリースできました。『もしドラ』アプリはどの端末でも快適な読み心地を追求しましたから、願わくは電子書籍の最初の読書体験をこのアプリで味わっていただいて、電子書籍の魅力を体験していただけたらと思っています」(常盤さん)
「電子書籍のスタンダードってこんな感じです、というようなアプリを出せたのではないかと思っています。かつてDVDが出始めた頃の『マトリックス』みたいな、電子書籍の『初めに買いたい1冊』となってくれるといいですね」(加藤副編集長)
あなたも「もしドラ」で、電子書籍デビューしてみてはいかがでしょうか。
BookPorterで読めるダイヤモンド社の電子書籍(外部リンク)