音楽配信サービスで気になる要素のひとつが「音質」です。なかでもロスレスやハイレゾロスレス配信に対応する「Amazon Music Unlimited」と「Apple Music」は、ともに最高音質を楽しめるサービスとして紹介されており、どちらが選ぶべきか悩ましいところです。
そこで今回は、音質をテーマに両サービスを比較。スペックやオーディオファイルの形式、再生の仕組みなどを整理しながら、両者の違いを明らかにしていきます。
Amazon Music UnlimitedとApple Musicの音質の違いは?
Amazon Music UnlimitedとApple Musicは、どちらもロスレス/ハイレゾロスレスに対応し、高音質配信の条件を満たしています。2つのサービスにも共通しているのは次のような特徴です。
- 可逆圧縮(ロスレス)音源に対応している
- CD音質(16bit/44.1kHz)を超えるハイレゾ音源に対応している
- 最大24bit/192kHzで配信されている
数ある音楽配信サービスの中でも、Apple MusicとAmazon Music Unlimitedが特に高音質とされるのは、上の3つの条件を満たしているからです。
問題は両者で違いがあるのかという点ですが、結論を言うと、スペックが同じなら音質は同じです。ただ細かく見ると、オーディオ形式や再生環境による微妙な違いも存在します。そのため同じ楽曲を再生しているのに、Apple MusicとAmazon Musicで音が違って聞こえるということも起こります。
なお、本記事ではAmazon Music Unlimitedについて言及していますが、Amazon Music UnlimitedとAmazon Music Standardの音質は同じです。
Amazon Music Standard
Amazon Music StandardはAmazon Music Unlimitedの下位にあたるAmazon Musicの新サービスです。
Amazon Music UnlimitedはAmazonのオーディオブック「Audible(オーディブル)」を月1冊まで追加料金なしで聴ける特典が付いています。Amazon Music StandardにはAudibleの特典が付いていないぶん、割安な料金で利用できます。
| プライム会員 | 非プライム会員 | |
|---|---|---|
| Amazon Music Unlimited |
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| Amazon Music Standard |
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Amazon Music StandardとAmazon Music Unlimitedの音質は同じです。Audibleの特典を利用しないということであれば、Unlimitedよりも月100円(年間払いなら年1000円)安く利用できるほか、高音質な音楽も楽しめます。
オーディオファイル形式の音質を比較
まずはオーディオファイル形式について見ていきましょう。Apple MusicとAmazon Music Unlimitedは、どちらも「ロスレス(可逆圧縮)」音源に対応しています。
Apple Musicは独自のオーディオファイル形式「ALAC」を採用
ロスレス配信を実現するため、Apple Musicでは「ALAC(Apple Lossless Audio Codec)」を、Amazon Music Unlimitedでは「FLAC(Free Lossless Audio Codec)」というオーディオファイル形式を採用しています。
重要なのは、オーディオ形式による優劣は理論上ないという点です。可逆圧縮は元のデータを完全に復元できるため、音質に差はありません。ALACとFLACは、この点で同等の性能を持っています。再生条件やマスター音源が同じなら、まったく同一の音になります。
最大ビット深度・サンプリング周波数で比較
両サービスが対応している音源のスペックを比べてみます。Apple Musicは、最大24bit/192kHzのハイレゾロスレス音源に対応しています。Amazon Music Unlimitedも同様に、最大24bit/192kHzの楽曲を配信しています。
Apple Music
Amazon Music Unlimited
ビット深度やサンプリング周波数は、音の解像度やダイナミックレンジの理論上の上限を示すものです。スペックだけを比べると両者はまったく同じです。オーディオ形式と同じように、再生条件やマスター音源が同じなら理論上は同じといって差し支えありません。
留意したいのは、対応している最大スペックと、実際に配信されている楽曲の数は別物という点です。
両サービスとも、すべての楽曲が24bit/192kHzで配信されているわけではありません。むしろ多くの楽曲が16bit/44.1kHz(CD品質)や24bit/48kHzなど、より一般的なスペックの音源で配信されています。実際に聴きたい楽曲がどのスペックで配信されているかは、楽曲ごとに確認する必要があります。
OSとの親和性で比較
見落としがちなのが、OSやアプリの設計による音の出方の違いです。音源のスペックが同じでも、再生されるときに余計な処理が入ることがあります。
Windowsのオーディオ設定
特に注目したいのは、OSによる出力経路の違いです。配信されている音源は、アプリやOSによって処理されて出力されますが、その途中で別の形式に変換されたり再処理されたりすることがあります。よくあるのが、OSのサウンド設定が48kHzで固定されているケース。44.1kHzや96kHzの楽曲を再生しても、ミキサーを経由すると再生前にリサンプリングされます。
Apple Musicは、iOSやmacOSとシステムレベルで深く統合されています。何の設定もなしにビットパーフェクト(元のデータを変更しない)出力がおこえるようになっており相性は抜群です。ただしWindowsやAndroidと組み合わせたときは、OSのミキサーを経由して音声が出力されるため、余計な処理が加わることがあります。
一方のAmazon Music Unlimitedは、AndroidやWindows環境で排他モードに対応しています。排他モードはミキサーを通さず出力できるモードで、音源をリサンプリングせず出力可能です。
もっとも、排他モードについて普通のユーザーは気にする必要はまずありません。排他モードでないからといって、ノイズが増えたり音が歪んだりといったわかりやすい劣化が起こるわけではないからです。高性能なヘッドホン/イヤホンやDACを使用して静かな環境で音に集中して聴くといったスタイルでもなければ、ほとんどの場合で違いを意識できることはまれなはずです。
マスター音源で比較
Amazon Music UnlimitedもApple Musicも、レコード会社やレーベルから提供されるマスター音源をもとに配信しています。まったく同じ音源が配信されることもありますが、実際はバージョンの違うマスター音源や、音量を標準化するために処理された音源が配信されているため、同じ楽曲でもサービスによって音の迫力や印象が変わることがあります。
Apple MusicはApple Digital Masters認定のある楽曲やアルバムがわかる
実際に音源を比べるのは難しいですが、Apple Musicはマスタリング品質において独自の強みがあります。それが「Apple Digital Masters」です。
Apple Digital Mastersは、Apple Musicでの配信に最適化された高品質マスタリングの認定プログラムです。iPhoneやMacなどAppleのエコシステムのために可能な限り最高の音源を制作できるように設計されています。
Amazon Musicにも高品質な音源は多数存在していますが、Apple Digital Mastersに相当するプログラムはありません。音質にこだわるリスナーにとって大きなアドバンテージとなるのは、独自の認定プログラムを用意しているApple Musicです。
空間オーディオの体感を比較
空間オーディオは音質を良くする技術ではないので少しずれるかもしれませんが、音楽の聴こえ方そのものにかかわるのと、デバイスとの組み合わせによって体験が大きく変わるので、判断材料のひとつに入れてもよいかもしれません。
Apple Music(左)とAmazon Musicの空間オーディオ設定画面
Apple Musicの空間オーディオは、Dolby Atmos対応楽曲が豊富です。そしてAirPods ProやAirPods Maxと組み合わせることで、ヘッドトラッキングに対応します。頭を左右に振っても、音源が空間上の固定された位置から聞こえる技術で、Apple製品同士を組み合わたときのみ実現可能です。iPhoneを使用した場合は、ユーザーの耳を撮影して音響を最適化する機能も備えています。
一方でAmazon Music Unlimitedは、Dolby Atmosと360 Reality Audioに対応しています。ヘッドトラッキング機能はありませんが、Android端末では360 Reality AudioやDolby Atomosに最適化されたものもあり、内蔵スピーカーでも楽しめるなど高品質な空間オーディオ体験が得られます。また、360 Reality Audioはソニー製ヘッドホンと組み合わせることで、耳の形状から個人に最適化する機能も利用可能です。
iPhoneやMacを利用しているならApple Music、Android端末ならAmazon Music Unlimitedというように、最適な組み合わせが分かれます。
まとめ:両者とも音質に大差なし、エコシステムとの相性で判断
音質だけで選ぶと、Apple MusicとAmazon Music Unlimitedは互角です。正直どちらを選んでも、音質で違いを感じること少ないでしょう。大きな不満を感じていないなら、音の好みやラインナップ、プランやUIなど、音質以外のポイントで自分に合うかどうかを判断するのがよさそうです。
ただし、両サービスにははっきりとした違いもあります。エコシステムで見たときの相性です。
Apple Musicは、Apple製品と組み合わせたときに真価を発揮します。Amazon Music UnlimitedとApple製品との組み合わせが悪いわけではありませんが、Apple Musicとの相性の良さやシームレスな体験にはかないません。Appleデバイスのユーザーなら、Apple Musicを選んでおけば間違いなしです。
一方で、Android端末やWindowsパソコンを中心に利用している場合、Amazon Musicの立場が逆転します。FLAC+排他モードの環境を実現しやすいのと、さらにiPhoneやMacでも高音質で出力できるので、音作りにこだわる人におすすめです。もちろん、プライム会員なら割引価格で利用できるのも嬉しい点です。
Apple MusicもAmazon Music Unlimitedも、すでに十分すぎるほどの音質を備えています。音質を理由に迷うよりは、自分の聴き方に合ったサービスを選ぶのが最適です。