ソーシャルアカウントを分析しニュースを配信するアプリ「Gunosy(グノシー)」のiPhone版がバージョン3.0.0にアップデートし、ソーシャル機能の追加や、キーワード登録、リアルタイム性の強化が行われた。Androidアプリも近日アップデート予定だ。
このアップデートによって起こったGunosyの3つの変化と、Gunosyがこれからどこへ向かおうとしているのかについて考えてみたい。
Gunosy アップデート内容の確認
まずは、アップデートの内容について確認しておこう。
ソーシャル機能追加
ソーシャルでつながっているユーザ(友達)のアクティビティのチェックやコメントができるようになった。
友達がいいね!(Facebookにも同時投稿可能)した記事が「周りで話題」のタブに随時表示される。その記事にはコメントすることも可能。Gunosy上で、他ユーザと意見のやり取りが可能となった。つまり、自分がいいね!をすると、フォロワーにも記事を共有することができるということだ。
友達は、Gunosyに接続しているアカウントのフォロー関係を元にしている。友達を探す機能も実装されているが、筆者の環境ではほとんどフォロー中のユーザが表示されており、独自SNSとしての機能というよりは、TwitterやFacebookをベースにした補助的なものなのかもしれない。
キーワード登録
従来、Twitter、Facebook、はてななどのアカウントを分析することで、興味関心のある記事を配信してきたが、新たにキーワード登録機能が追加された。
キーワードは検索して探すことも可能。これまでのニュース配信にどの程度の影響が出るのかは今のところ不明だが、より能動的に自分好みの情報を入手できるようになるはずだ。
リアルタイム性の強化
これまで基本的に朝夕の2回配信を行ってきたGunosyだが、今回のアップデートによって、よりリアルタイム性を強めた情報収集ツールに変化した。「周りで話題」と「今日の主要ニュース」の追加がそれだ。
「周りで話題」には、友達がいいね!した記事や、自分と類似しているユーザが読んだ記事が流れてくる。また、「今日の主要ニュース」は、より一般的なニュース。SNS上で話題になっている記事を配信するようだ。
その他
- お気に入りの名称が「クリップ」に
- 背景テーマの変更が可能に
アップデートに見る、Gunosyの3つの変化
これまでのGunosyには大きな特徴が3点あった。それは、ゆるやかなソーシャル性、受動性、定期性だ。
この3点が、アップデートによって大きく変化した。特に、ソーシャル性の強化と他の競合ニュースアプリを明確に意識したであろう機能の追加が印象的だ。
ゆるやかなソーシャル性からの変化
ソーシャルアカウントを接続することで、自分の興味関心に沿った記事を配信してきたGunosyは、ゆるやかなソーシャル性を有したニュースアプリだった。
しかし、友達のアクティビティに基づく記事配信やコメント機能の追加で、従来の一般的なSNSの側面が強く押し出されるようになる。
これまでも、ソーシャルで話題になった記事が配信されてきたが、それは「みんな」が話題にしているというレベルでの抽象化されたソーシャル性。「周りで話題」タブでは、よりダイレクトに友達の興味関心が反映されるように変化した。
受動性からの変化
また、Gunosyは、競合ニュースアプリ「Vingow」のタグ機能と類似したものをキーワード登録機能として追加した。
従来、Gunosyはソーシャルアカウントを解析することでユーザの興味関心を分析し、その興味関心に基づくニュースを配信してきたわけだが、少なくともGunosy内でにおいてはユーザは受動的な情報受信者にすぎなかった。
この点、キーワード登録機能は、Gunosyをより能動的に使うことを可能とするものだ。これまで、Gunosyのレコメンドが少し自分の興味関心とずれていると感じていたり、ソーシャルアカウントでは発信しないタイプの内容の記事も配信してもらいたかったりする場合もあっただろう。キーワード登録によってこれまで以上に柔軟に自分好みのニュース配信ツールとして能動的に利用できるようになるはずだ。
定期性からの変化
朝刊・夕刊の2回配信は維持されるが、新たに追加された「周りで話題」は随時更新される仕様になっている。つまり、リアルタイム性のあるニュースアプリに変化したと言ってよい。
これは、ソーシャル機能の追加と密接に関連する。昨日話題になったニュースをソーシャルアカウント解析で配信するだけではなく、今ソーシャルで話題になっているニュースも配信することになるからだ。
また、注目したいのが、ニュースアプリ「SmartNews」的なニュース配信ブロック「今日の主要ニュース」の追加。総合ニュースと各ジャンルに分かれており、それぞれ30本程度を配信する。更新頻度は不明だが、筆者が確認した限りではかなりリアルタイム性が高そうだ。
Gunosyの目指す先は
最初の評価は分かれそう
Gunosyは、ユーザのアプリ接触回数を増やす方向に舵を切った。しかし、ある時刻にまとまった情報を届けてくれる定期性も捨てがたい魅力。あまりにもリアルタイム性を強めていくと、元々の持ち味を殺してしまいかねない。
また、ソーシャル機能の追加についても同様の見方ができるだろう。これまでの記事だけを配信するスタイルが良かったという意見も必ず出てくるに違いない。
もちろん、朝刊・夕刊のシステムは維持されているので、リアルタイム性だけを強調するのは筋違いかもしれないし、ソーシャル機能に関してもユーザが使わなければいいだけだという考え方もあるだろう。しかし、それでもなおサービス全体としての方向性がぼやけてしまう印象は否めない。
未来のヤフトピを目指すのか
なぜ、そうまでしてGunosyは大幅なアップデートに踏み切ったのか。
これは筆者の推測だが、Gunosyの野心の表れが今回のアップデートなのではないか。その野心とは、分かりやすく例えれば、Gunosyがモバイル時代に最適化された未来の「ヤフトピ(ヤフートピックス)」としての地位に就くことを目指すということだ。
一定のソーシャル性、優秀なレコメンドエンジン、適度なリアルタイム性をバランスよく兼ね備えたニュースアプリとしてのGunosy。それは、Gunosyがヤフトピのように大衆に使ってもらうことができて初めて達成できるものだ。
アップデートとともに公表されたユーザ数60万人という規模感では、彼らの目指す領域には到達していないはず。アーリーアダプター層に使ってもらうだけではなく、1000万人もしくはそれ以上の規模のユーザ数を獲得しサービスとして脱皮するために、朝刊・夕刊システムの一点突破の道を捨て去る時期に来たと判断したのだろう。
自分に最適化された情報が勝手に向こうからやってきて入手できるツールとして、Gunosyはどこまで進化することができるのか。
今後のアップデートには、絶妙なさじ加減が求められそうだ。