ドイツのセキュリティソフト第三者評価機関のAV-TESTは、2013年上半期に3回にわたって実施されたAndroid向けウイルス対策アプリ全30本の性能比較調査の結果をまとめた。調査概要や好成績を残したアプリなどについて紹介する。
AV-TEST調査の概要
調査は2013年1月、3月、5月に計3回行われたもので、最新版の各ウイルス対策アプリについてマルウェア検出力、ユーザービリティの二つの側面から評価している。対象アプリは1回目が21本、2回目が27本、3回目が30本(2回目に6本、3回目に3本が新規追加された)。
マルウェアの検出テストは、4週間以内に出現した最新のマルウェアサンプル約800~2,500種を用いて行われた。
検出率を算出するほか、SDカード上にコピーされたサンプルをフルスキャンでどれだけ検出できるかみる「ON-DEMAND TEST」、リアルタイム保護機能(マルウェアをインストールしようとすると警告する)をテストする「ON-ACCESS TEST」、クリーンなアプリを誤検出しないかみる「FALSE POSITIVE TEST」の結果などを独自にスコア化している(Protectionスコア)。
またユーザビリティについては、一定環境下でGoogle Playからクリーンアプリをインストールする際のCPU使用率、メモリ占有率、ネットワークトラフィック量などをチェックし、各ウイルス対策アプリがバッテリー消費や動作速度など端末のパフォーマンスへ与える影響を評価した(Usabilityスコア)。
調査の結果:マルウェア検出率、性能スコア
Androidプラットフォームではマルウェアは日々増加・進化し続けており、2013年7月には110万サンプルを超えると推測されている。そうした環境変化の影響もあってか、今回の調査報告は1月に実施されたものとはだいぶ異なっている。
正確な比較を行うため、調査結果はテストを3回受けたアプリ、2回のアプリ、1回のみのアプリと、受けたテスト回数に応じてグループ分けされている。たとえ同じ成績でも、テストを受けた回数が多いほど信憑性が高いスコアともいえるだろう。
マルウェア検出率
上表のように3回の平均検出率は、「Antiy: AVL」および「Bitdefender: Mobile Security」が99.8%でトップ。また「Symantec: Norton Mobile Security」と「Trend Micro: Mobile Security」が99%台で続き、好成績を収めた。
「Lookout: Security & Antivirus」(検出率98.9%)から「Webroot: SecureAnywhere Mobile」(検出率96.3%)までの13アプリは良好なスキャンレートを記録したと述べられているものの、それ以下に関しては問題があると指摘されている。
またテスト2回のグループでは、「Kingsoft: Mobile Security」と「McAfee: Mobile Security」がそれぞれ平均検出率99.9%、99.7%と目立っており、3回グループの最上位に匹敵する優れた結果が得られている。
プロテクション・ユーザビリティのスコア
マルウェア検出力を示すProtectionスコア(6.0点満点)とUsabilityスコア(6.0点満点)による評価では、3回グループで「Symantec: Norton Mobile Security」が計12.5点(5.5+6.0+1.0)でトップとなった。
※端末紛失時に遠隔で探索・ロックできるなどのアンチセフト機能を備えるアプリは1.0点の加点対象。
次いで「Bitdefender: Mobile Security」(12.3点)、「Lookout: Security & Antivirus」(12.2点)、「Trend Micro: Mobile Security」(12.2点)、「Comodo: Mobile Security」(12.0点)、「ESET: Mobile Security」(12.0点)が上位にランクインしている。
テスト2回のグループに目を向けると、「McAfee: Mobile Security」(12.8点)、「Kingsoft: Mobile Security」(12.5点)、「MicroWorld: eScan Mobile Security」(12.5点)となっており、数字上はトップの「Symantec: Norton Mobile Security」を上回る(並ぶ)スコアを記録した。
まとめ:結局どのアプリがよいのか
上記の結果から考察すると、総合力で最も信頼できるアプリは「Symantec: Norton Mobile Security」、または「Bitdefender: Mobile Security」だろう。なかでも、ユーザビリティ重視のユーザーはSymantec、マルウェア検出力重視ならBitdefenderという選択になりそうだ。

また、検出率でトップとなった「Antiy: AVL」は、スコア評価ではアンチセフトの加点が得られず上位に入れなかったが、ProtectionスコアでBitdefenderと並び、Usabilityスコアでは上回っている。アンチセフト機能の有無を気にしないユーザーなら、Antiyも視野に入ってくる。
さらに、テスト2回グループとなるが、「Kingsoft: Mobile Security」は全アプリ中で最も高いマルウェア検出率を誇り、「McAfee: Mobile Security」は全アプリ中で最も高いスコアを示している。テスト3回グループとの比較は難しいが、今後も期待できるポテンシャルを秘めた2本といえるだろう。