Image:Alan Levine/Flickr
iPhoneに使われているリチウムイオン電池には寿命があります。バッテリーを充電してもすぐ消耗してしまったり、充電ができなくなったりと不具合が発生している場合、最終的にバッテリーの交換が必要になるケースもあります。
iPhoneのバッテリーが劣化するとiOSにより性能が下げられ、パフォーマンスが悪くなるということをAppleも認めています。これは、iPhoneの強制終了を回避するための処置だといいます。このためiPhoneが「重い」「遅い」と感じる場合は、バッテリーが劣化している可能性もあります。
本記事では、バッテリー状態を診断・確認する方法(最大容量などの目安)や交換にかかる費用、無料交換プログラムといった現状に加えて、電池劣化を防いで寿命(耐用年数)を長持ちさせるための工夫をまとめてみました。
iPhoneバッテリー交換の方法──実際にかかる料金や時間、予約持ち込み/配送修理の手順を解説
バッテリーの寿命(劣化度・最大容量)を診断・確認する方法
iOS 11.3以降では、iOSの設定に「バッテリーの状態」が追加されています。これを使えば、iPhoneのバッテリーがどのくらい劣化しているのか、新品時と比較したバッテリー容量の基準(最大容量)などを診断することができます。
iPhoneの設定で「バッテリーの状態」を確認する
iPhone 6以降のモデルでは、バッテリーの交換が必要な場合にそれを推奨したり、バッテリーの最大容量を調べたりすることが可能です。
これらバッテリーの状態を確認するには、iPhoneの「設定」アプリから[バッテリー]→[バッテリーの状態]と進みます。
「バッテリーの状態」の画面にある[最大容量]には、新品時と比較したバッテリー容量の基準(充電可能な最大容量)がパーセントで表示されます。この場合なら、2%容量が縮小している計算になります。
バッテリーの最大容量は化学的経年劣化が進むにつれて低下し、1回の充電でiPhoneを使える時間が短くなります。なおiPhoneは、通常使用でフル充電サイクルを500回繰り返した後も最大容量80%を維持するように設計されています。
バッテリー劣化に伴うiPhoneの性能低下の有無がわかる「ピークパフォーマンス性能」
iPhoneのバッテリーが劣化が進むとバッテリーの最大瞬時給電能力(ピーク電力)も低下し、特に充電残量が少ない、寒冷地などでの使用で、iPhoneの強制シャットダウンが発生することがあるといいます。Appleではそうした状況下でもiPhoneを継続して使えるように、iOSが端末のパフォーマンス(性能)を意図的に低下させ、突然のシャットダウンを防ぐようになっています。
この性能低下(パフォーマンス管理機能)が適用されると、アプリの起動に時間がかかる、画面スクロールにちらつきが出る、バックライトが暗く感じる、スピーカーの音量が小さい、アプリの動作がもたつく、バックグラウンド更新がおこなわれないことがある、極端な場合、カメラのフラッシュが利用できないといった現象が表出します。
これを司るのが、設定にある「ピークパフォーマンス性能」の項目です。「設定」アプリから[バッテリー]→[バッテリーの状態(ベータ)]と進んだ画面で、状態の確認などがおこなえます。バッテリーの劣化状況や性能低下の有無によって、表示内容は以下のように変わります。
パフォーマンスが正常な場合
上記メッセージが表示されている場合、バッテリーが通常のピークパフォーマンスに対応できる状態であり、パフォーマンス管理機能は適用されていません。
パフォーマンス管理が適用された場合
左:性能低下(パフォーマンス管理)がはかられている右:パフォーマンス管理機能を手動で無効化した画面
左上画面のメッセージが表示されている場合、文字どおりパフォーマンス管理機能が働いています。
[無効にする]をタップして無効化できますが、ユーザーが手動でオンにはできなくなります。突然のシャットダウンが発生した時に自動で再びオンになります(無効にするオプションも表示されます)。
バッテリーが劣化している場合
バッテリーが著しく劣化していると、上記メッセージが表示されます。安全性の問題を示すものではなく、引き続き使っても問題ありませんが、バッテリーを交換することで快適に使えるようになります。
バッテリーの状態が不明な場合
iOSがiPhoneのバッテリー状態を判定できないと、上記メッセージが表示されます。バッテリーが正しく取り付けられていなかったり、バッテリー部品が不明であったりすることが原因と考えられます。
バッテリー劣化の警告表示
バッテリーの消耗が早い時の対処方法について、「iPhoneバッテリーの電池を節約して駆動時間を長持ちさせる19の方法」の記事で紹介しました。
ただ設定やアプリのせいではなく、バッテリーそのものに不具合が起きていることも少なくありません。iPhoneのバッテリー交換の目安は、使用頻度などに左右されるため何年という基準はありませんが、バッテリーのパーセント表示がおかしくなったり、電池が膨張する、減りが極端に早いといった症状がみられることもあります。
そこで最初に確認したいのは、バッテリーの交換時期が迫っている時にiPhoneの設定画面に表示される「警告」です。
iOS 10.2.1以降を搭載したiPhoneでは、バッテリーの交換時期が来ている可能性があるとiOSが診断した場合、上記画像のように「iPhoneのバッテリーの点検修理が必要になる可能性があります」というお知らせが「設定」アプリ→[バッテリー]と進んだ画面の最上部に表示されるようになっています。
iPhoneのバッテリー、交換時期が来るとiOS診断による警告を表示してくれる機能が追加
この表示が出たからといって安全性にかかわる問題が生じているというわけではありませんが、バッテリーの性能が低下している可能性が高いため、一度iPhoneを点検・修理に出すことをおすすめします(修理に出す方法は後述)。
このほか、Appleが提供している「iOS診断」を利用すれば、本体に異常がないかiPhoneだけでチェックができます。以下その手順を紹介します。
Appleサポートを通じた診断の手順
Appleサポートに、バッテリーに関する相談をすることも可能です。
SafariなどのブラウザでAppleサポートの「お問い合わせ」ページを開きます。
画面を下にスクロールして、「Appleサポートに問い合わせる」の項目の[こちらから]ボタンをタップします。
「どの製品のサポートをご希望ですか?」のページに遷移するので、診断をおこないたい製品を選択します(ここでApple IDによるログインを求められる場合もあります)。ここでは、iPhoneのバッテリーについて尋ねるので、[〜のiPhone]を選択します。
[バッテリーと充電]→[バッテリーに関する質問/トラブルシューティング]の順にタップして進みます。
[すべて表示]をタップして、サポート方法を選択する画面が表示されます。2019年5月現在、アドバイザーとの電話、もしくはチャットでサポートが受けられます。
なお、無償テクニカルサポートの対象でなく、有償でのサポートとなる場合もあるようです。
Appleサポートとつながったら、アドバイザーにはバッテリーの不調などについて伝えましょう。
あとは担当者の指示に従って、バッテリーの診断を受けてください。
バッテリーの劣化度を調べるアプリ「Battery Life」
iPhone 5sより古いモデルなどでは、サードパーティ製アプリ「Battery Life」を用いてバッテリー容量の消耗度合いをチェックすることも可能です。※iOS 12以降では、本アプリを用いてバッテリー劣化度を調べることはできなくなりました
アプリを起動すると、いきなり「バッテリーの摩耗状況」が表示されます。これは、現在のバッテリーが容量ベースでどれくらい劣化しているかを示すものです。
たとえば、筆者の3年近く使用したiPhone 5sは約9%摩耗しており、平均からみれば悪くない(良い)劣化レベルであると診断されました。
メニューから[RAWデータ]をタップすると、劣化状況をさらに細かく確認できます。
この「容量」という項目が摩耗状況を示しています。つまり、現在の最大バッテリー容量と設計上の最大バッテリー容量(工場出荷時)の対比です。
本来は1550mAhのバッテリー容量があるはずなのに、経年劣化(これまでの使用状況に左右されます)により最大1405mAhまでしか充電できない状態になっているというわけです。
このほか「充電回数」の項目も参考になりそうです。とはいえ、Apple公式の診断ではないので、あくまで目安として捉えておくのが賢明でしょう。
無料の「iPhoneバッテリー交換プログラム」も見逃せない
Appleは、iPhone 6sの一部でバッテリー残量が50~60%ほどになると突然シャットダウンしてしまう不具合に対して、「iPhone 6s が突然シャットダウンする問題に対するプログラム」を提供しています。対象は2015年9月から10月までの間に製造され、該当するシリアル番号のiPhone 6sです。
iPhone 6s が突然シャットダウンする問題に対するプログラム - Apple サポート
同様の症状が起きているiPhone 6sすべてが該当するわけではないようですが、上記公式ページでシリアル番号を入力して対象と認められれば、無償でのバッテリー交換が受けられるものとなっています。
Apple Storeに持ち込む場合は予約が必要です。サービスプロバイダへ持ち込む場合も、バッテリーの在庫があるか事前に確認したほうがいいでしょう。
近くにApple Storeやサービスプロバイダがない時は、Appleのサポートへ連絡すれば郵送の手続きもおこなえます。
バッテリーを交換する費用は?(AppleCare+など)
不具合のないiPhoneでも、使い続けていればバッテリーが弱ってきます。その場合、Appleの修理サービスを利用して、バッテリーを交換することができます。
Apple製品限定保証またはAppleCare+ for iPhoneの保証対象 | 保証対象外 | |
---|---|---|
iPhone X、XS、XS Max、XR | 0円 | 7800円 |
iPhone SE、6、6 Plus、6s、6s Plus、7、7 Plus、8、8 Plusなど、すべての対象モデル | 0円 | 5400円 |
2017年12月、Appleはバッテリーが劣化した古いiPhoneにおいてiOSアップデートにより意図的にパフォーマンスが低下させられていた問題について正式に謝罪し、iPhone 6以降のモデルのバッテリー交換費用を値下げすることを発表しました。
2018年1月以降、日本では従来の8800円から5600円減額され、劣化の程度にかかわらず3200円でバッテリー交換サービスが受けられるようになりました。ただし減額は2018年12月末日までで、3200円でバッテリーサービスを受けられるのはiPhone 1台につき1回限りです。
2019年1月からバッテリー交換の費用は、購入1年以内またはiPhone向け保証サービス「AppleCare+ for iPhone」の保証期間内なら無料、それ以外はiPhone X、iPhone XS、iPhone XS Max、iPhone XRで7800円、その他すべてのiPhoneモデルで5400円に改定されました。
AppleCare+ for iPhone
なお、AppleCare+ for iPhoneによる無償交換は、「電源を維持する対象デバイスのバッテリーの能力が正式な製品仕様の80%未満しか発揮できなくなった」場合に適用となります。
- AppleCare+ for iPhone(Apple)
- AppleCare+ for iPhone(NTTドコモ)
- AppleCare+ for iPhone(au)
- AppleCare+ for iPhone(ソフトバンク)
バッテリー交換の依頼は、「アップル正規サービスプロバイダまたはApple Storeが窓口となります。配送による修理も受け付けています。このほか、一部のソフトバンクショップやauショップでも受付を開始しています。バッテリー交換完了後、代金を各窓口で支払うことになります。
iPhoneが故障した時の修理ガイド──予約から料金、修理期間、代替機、保証範囲の調べ方まで
バッテリー交換時のデータのバックアップについて
バッテリーの交換でAppleストアや正規サービスプロバイダ、キャリアなどに修理を依頼した場合、原則的にiPhoneのデータは初期化されてしまいます。そのため、修理前のデータのバックアップは必須といえるでしょう。
何らかの事情でバックアップが取れない場合、「データは初期化しない」と謳っている非正規の修理業者に依頼する方法があります。ただしデータが保証されるわけではないので、できればバックアップをとっておくに越したことはありません。
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劣化を抑えバッテリーの寿命(耐用年数)を長持ちさせるコツ
iPhoneのバッテリーに採用されているリチウムイオン電池は、充電と放電を繰り返すことで寿命が少しずつ劣化していきます。
iPhoneのバッテリーは、(正しい)フル充電と放電のサイクルを約500回繰り返した時に、本来の容量の最大80%維持できるように設計されていますが、使い方によっては劣化の度合いが早まることもあります。
電池が劣化すると、フル充電しても駆動時間が短くなるため、できるだけバッテリーが劣化しない充電方法を習慣付けることが、バッテリーの耐用年数を延ばすことにつながります。
バッテリーは「一気に」充電しないほうがよい
出典:NTTファシリティーズ総合研究所「小形リチウムイオン電池の寿命特性」
バッテリーが劣化する原因はいくつかあります。放電深度が高いと、より劣化しやすいということもその一つです。放電深度とは、バッテリー容量に対する放電量の比のことをいいます。
たとえば、フル充電から空っぽになるまで(100%低下)と、100%から半分程度の低下(約50%低下)では前者のほうが放電深度が高く、充放電サイクルに伴う電極の物理的変化(イオンの出入りによる体積変化など)によりバッテリーが早く劣化します。
バッテリーは完全に使い切るまで使うのではなく、だいたい30%くらいまで使ったら充電するといったように、放電深度を低めにしつつ充電回数も抑えるような使い方を心がけると、寿命を延ばすことに寄与する可能性があるというわけです。
充電中はiPhoneケースを取り外す
iPhoneを充電する際、ケースを付けたままにしていませんか。
ケースにiPhoneを入れたまま充電すると、過度の熱が発生してバッテリー容量に影響を及ぼす恐れがあります。特にiPhoneが熱くなっていたら、ケースから取り外してください。
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長く使わない場合、50%前後の充電状態で適温下に保管する
このほか、iPhoneを長期間利用しない時は、保管方法にもコツがあります。まず、保管場所は極端な温度の場所を避けます。最適なのは、湿気のない32℃以下の涼しい環境です。
そして、バッテリーの劣化を最低限に抑えるには、50%前後充電した状態にして保存するのがポイントです。フル充電にしておくのはおすすめできません。電源はもちろん切り、この状態でバッテリーを使い切ったら、再度50%前後まで充電し保管します。
バッテリーを使いきったまま放置すると過放電となり、これも劣化を早める原因となります。6カ月以上端末を保管する場合は、6カ月ごとに50%まで充電するのを目安にするとよいでしょう。
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