モバイルバッテリーはとても人気がある製品で、多くのユーザーが持ち歩いています。それほど高価ではないため、追加購入や買い換えを考えている人も少なくないでしょう。
そこで今回は、最新のモバイルバッテリーの選び方を紹介します。具体的なおすすめ製品を交えながら、利用デバイスごとに悩まずに選ぶ方法を解説したのち、ちょっと複雑なスペックの見方もまとめておきます。
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機器別の最適なモバイルバッテリーの選び方
まずは、いま使っている機器に向く最適なバッテリーの選び方を紹介します。スマホなどをこれから買い換えることも視野に入れて、読み進めてください。
通常のスマホを充電するモバイルバッテリー
スマホに普通の速度で充電するなら、一般的なモバイルバッテリーを買えば問題ありません。おすすめは容量が5000〜10000mAhのモデルです。デザインや好みで選んでも問題ありませんが、なるべく有名ブランドのものを選ぶのが安心です。出力が5V/2Aのものが主流で、このスペックを満たしていれば特に充電が遅いようなケースもないはずです。5V/2.4Aなどもほぼ同様です。
ただし、これから買うなら、自分のスマホにあった急速充電ができるタイプをおすすめします(詳細は後述)。急速充電に対応していると、たとえば通常のバッテリーで3時間かかる充電が2時間程度で終わるなど、短時間で充電可能です。
手ごろな価格で売れ筋となっている「Anker PowerCore 10000」(Anker)
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QuickCharge対応のスマホ向けモバイルバッテリー
多くのスマホが「QuickCharge」に対応しています。QuickChargeに対応するスマホに、同じくQuickChargeに対応するモバイルバッテリーを接続すると、急速充電が可能です。
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実際にバッテリーを見ると、あらゆる製品に「急速充電」と記載されているので混乱しますが、そもそも1Aの出力しかないバッテリーが主流だった時代に2Aのバッテリーを「急速充電」としていました。ところが今や2Aの出力は普通なので、実質的には急速充電とはいえません。
QuickChargeに対応した製品同士なら、本当の急速充電が可能です。QuickChargeは上位互換なので、スマホが「QuickCharge 2.0」対応でもバッテリーが「QuickCharge 3.0」対応なら問題ありません。
Ankerの「PowerCore Speed 10000 QC」はQuickCharge 3.0に対応するコンパクトなモデルだ
後述するUSB PD対応のバッテリーでQuickCharge対応のスマホに充電しても、速度は上がらない
独自の急速充電に対応するスマホ向けモバイルバッテリー
HUAWEIなど独自の急速充電を採用しているスマホでは、対応しているバッテリーを選ばないと急速充電ができません。たとえば、HUAWEIなら「Tronsmart Presto 10000 PBT10」というモデルが対応製品として手に入ります。
ただし、まだ選択肢が少ないので、通常のバッテリーを利用してもよいでしょう。
HUAWEI独自の急速充電に対応する「Tronsmart Presto 10000 PBT10」
iPhoneを充電するモバイルバッテリー
iPhone向けのバッテリーを買うなら、前記の5V/2Aのモデルがおすすめです。特にiPhone 6 Plus、iPhone 6s Plus、iPhone 7、iPhone 7 Plus以降のモデルは、当時の急速充電に対応するので、5V/2A以上のバッテリーが快適に利用できます。
さらにiPhone 8以降では、専用の機器を使うと30分で50%の急速充電ができるとされています。Appleが認めているのは、純正のUSB-C電源アダプタとUSB-C/Lightningケーブルの組み合わせです。モバイルバッテリーでも、後述するUSB PDに対応した製品とUSB-C/Lightningケーブルを利用すれば急速充電ができる可能性があります。
ただし、そもそもUSB PDに対応したバッテリーはほとんどが20000mAh程度の大きな製品になり、持ち歩くのが大変です。また、Apple純正のUSB-C/Lightningケーブルは2800円もします。当面は5V/2Aのバッテリーで様子を見て、コンパクトなバッテリーや手ごろなケーブルが出てきたら利用してみるのがおすすめです。
近い将来、iPhone 8やiPhone X向けの急速充電対応バッテリーやケーブルが登場してくるでしょう。
Apple純正のUSB-C電源アダプタ(左)およびUSB-C/Lightningケーブル(右)
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パソコン向けのモバイルバッテリー(USB PD)
パソコンにも、モバイルバッテリーで充電できる時代がいよいよやってきました。USB PD(Power Delivery)という規格に対応したバッテリーから、同じくUSB PDに対応したパソコンに充電できます。現在販売されているUSB PD対応のバッテリーは、パソコンでの利用を主目的に作られているため、20000mAh程度の製品からとなっています。
ここで気をつけたいのが出力です。バッテリーはPDに対応しているモデルでも、30W、45Wなど出力の異なる製品があります。
パソコンは、製品によって45Wやそれ以上の入力を求めます。45Wの入力を求めるパソコンでも、30W出力のバッテリーで充電できるケースとできないケースがあります。普通に充電ができなくても、パソコンの電源をオフにしていたりスタンバイにしていたりすると、充電が可能なことが多くなります。
なお、パソコンの充電口がUSB Type-CでもPDには対応していないものがありますが、実際には充電ができるケースも少なくありません。つまり現時点では対応がばらばらで、なかなか判断しづらいのです。どのモバイルバッテリーでどのパソコンに充電できるのかは、相性を含めて自分で情報を集めるしかないのが実情です。バッテリーメーカーの公式サイトなどに、充電できる組み合わせが記載されていれば安心です。
パソコンにバッテリーで充電をしている。写真は「Anker PowerCore Speed 20000 PD」
「Anker PowerCore+ 26800 PD」は大容量のPD対応バッテリーだ
パソコン向けモバイルバッテリーをスマホにも使いたい場合
悩ましいのは、パソコンとスマホのバッテリーを共用したいと考えるのが普通だからです。パソコンのPDに対応したバッテリーは、ほとんどQuickChargeには対応していません。そのため、スマホへの充電は普通の速度になります。これを理解して製品を選ぶのがよいでしょう。
たとえば「RAVPOWER 20100mAh」という製品はパソコンにUSB-C端子で充電できますが、PDには対応していません。しかし、QuickChargeには対応しています。一部のパソコンしか充電できないので、あまりおすすめはできませんが、このように「パソコンに充電が可能でスマホには急速充電できる」モバイルバッテリーという選択肢もあります。
見逃せないのが、バッテリーに付属のACアダプターです。AnkerのPD対応バッテリーには、PD対応のACアダプターが付いてきます。相性がよければ、パソコンにも充電できるのです。たとえば、パソコン付属のACアダプターが45Wだと出力が低いので充電時間がやや長くなりますが、1つのACアダプターでパソコンとスマホ両方に使えるのが便利です。
「RAVPOWER 20100mAh」はUSB-C端子を利用してパソコンにも充電できる
QuickChargeにも対応するので、スマホにも急速充電が可能だ
AnkerのPD対応バッテリーに付いてくるACアダプターは、パソコンに充電できるケースもある
モバイルバッテリーのスペックはここを見よう
PD対応のバッテリーを選ぶ際には、スペックを知ることが重要です。
ACアダプターやバッテリーの出力は、「出力: 5V=3A、9V=3A、15V=2A、20V=1.5A」といったように記載されています。このケースでは、最大30Wの出力が得られるわけです。パソコンのACアダプターの表記を見れば対応しているワット数がわかりますから、同じか上回る出力のACアダプターやバッテリーを手に入れればよいのです。
たとえば「PowerCore Speed 20000 PD」の出力は、「Power Delivery出力: 5V=3A、9V=2.6A、15V=1.6A」と記載されています。数値を掛けてみると、15×1.6で24Wだとわかります。つまり、30Wの出力を求められるパソコンなどに接続すると、出力30Wのバッテリーより少し充電時間がかかるわけです。
30WのACアダプターはスマホとパソコンの両方に使い回せる可能性がある。ただし、パソコンは電源を落としている時しか充電ができないケースも
まとめ
少々混乱している人もいらっしゃるでしょう。まずスマホに充電するには、5V/2A以上のモバイルバッテリーなら合格です。スマホがQuickChargeに対応しているなら、バッテリーも対応品を選べば満点です。価格もさほど変わりません。
パソコンにモバイルバッテリーで充電したいなら、PD対応の製品を選び、自分のパソコンが対応していることをメーカーの公式サイト等で確認するのがベストです。確認できない時には、メーカーに問い合わせてもよいでしょう。ただし、パソコンの充電端子がUSB-Cでない場合には、PD対応のバッテリーでは充電できないことに留意してください。
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構成・文:戸田覚
編集:アプリオ編集部