運命が本当にあるとしたら、人生を何度繰り返してもやっぱり同じ結果になってしまうのでしょうか。過去に戻れる魔法や運命論よりも確実に明日を変える方法は、もしかしたら自分の本質に向き合うことだけなのかもしれません。
ドラマ『リピート』は、謎の男から過去のある時点に戻って人生をやり直す「リピート」に誘われた8人の男女が、10カ月前の人生を再び体験する様を描いたミステリーです。
人と関わることが苦手な図書館司書の篠崎鮎美(貫地谷しほり)。念願の彼で一流商社マンの一樹(松田悟志)との結婚を夢見る日々の中、風間(六角精児)と名乗る見知らぬ男から突然電話がかかってきます。「今度あなたをリピートに招待したいのです」と告げる風間。
鮎美は、半信半疑ながらも説明会に参加します。説明会に集まったのは年齢も職業もバラバラな男女8人。キャバクラでボーイをしている毛利圭介(本郷奏多)、カフェ経営者の天童太郎(ゴリ)、トラック運転手の高橋和彦(福田転球)、ダンスが趣味の主婦・横沢佐知子(手塚理美)、食品開発の研究員・大森知恵(安達祐実)、金欠に悩む会社員・郷原俊樹(清水圭)、東大志望の予備校生・坪井要(猪野広樹)。秘密を誰にも漏らさないこと、リピートした後もなるべくこれまでと同じように生き、人の生死を変えるようなことはしないことを条件に、後日8人全員が「リピート」への参加を決意します。
リピート参加前、職場のちょっとしたアクシデントで一樹との約束に遅れてしまった鮎美。プロポーズを逃した上に「タイミングってあると思うんだよね」と別れ話を切り出されてしまった過去を払拭し、リピートで戻ってきた今回は見事彼からプロポーズの言葉を聞くことに成功します。
後日どこか嬉しそうな雰囲気を携え再び集まった面々を前に、「残念なことをお伝えしなければなりません。我々の仲間になるはずだった高橋さんが亡くなりました」と告げる風間。「話が違うじゃないか。リピートしたら、いいことばっかり起こるような言い方しやがって」と人生の歯車がどこかで狂い始める予感が漂う中、先の人生にはなかった出来事が次々と起こり始めて……。
悲しい運命と対峙する友情、愛情、そして狂気
原作は、巧妙な伏線と衝撃のラストが話題になり、映画も好評だった『イニシエーション・ラブ』の作者・乾くるみ氏の長編ミステリー。小説とは大きく異なる設定だけに、ガレッジセールのゴリ、清水圭らユニークなキャスティングを踏まえたドラマならではの楽しみ方が期待できる作品です。
とにかく注目すべきは、予測不能などんでん返し。婚約成立や事故回避といった、リピートがもたらした吉報が悪いことの予兆にしか見えてこない点に加えて、目論んでいたのとはまったく違った方向から驚かされるのには毎回ハラハラさせられます。
同時に気になるのが、登場人物一人ひとりの背景。主人公の鮎美や圭介と共に、リピートの謎に立ち向かうどこかリーダー的な天童。金儲け目的の参加だと豪語しますが、どうやら本当の理由がありそうです。さらに、ぶっきらぼうで感じの悪い圭介と、そんな圭介を敬遠する鮎美の関係に訪れる変化も気になるところ。何よりも、「何度かリピートしているうちに、この幸運を独り占めするのがもったいないと思うようになったんです」と語る不気味なキーマン・風見の真意は何なのでしょうか。
第1話出だしの不穏な映像。リピートする為に8人が訪れた洞窟へ向かう道中で、「このあたりの景色、覚えとけよ」と圭介に呟く天童。幸せの途上で鮎美が見てしまった信じられない光景。「圭介はずっと由子のものだよ」と札束で圭介の顔を叩き、部屋に隠しカメラを仕掛ける狂気の女・由子(島崎遥香)。散りばめられた点と点がどうつながるのか。リピートすれば幸せになれると思っていた8人を待ち受ける、驚くべきラストがとにかく気になります。
人間の欲と悲しい性を描いた、藤子不二雄Ⓐのブラックユーモア作品『笑ゥせぇるすまん』を思い起こさせる、秀逸なミステリーです。