『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』は、マクドナルドの「創業者」を描いた作品です。
タイトルの「ファウンダー」とは創業者という意味で、もちろん事業を始めた人を指す言葉です。なぜ、「」つきの創業者の物語なのか。そこに本作の面白さと現実の残酷さがあります。
冴えないミルクシェイク用ミキサーの営業マンだったレイ・クロックは、ディックとマックのマクドナルド兄弟が運営するマクドナルドの効率良いシステムに感激し、フランチャイズ化を任せてくれと売り込むのですが、レイは次第にマクドナルドを乗っ取っていくのです。そして、いつしか、彼は自分がマクドナルドのファウンダーであると名乗るようになっていきます。そんな成り上がりのビジネス成功譚を小気味よく描いている作品です。
創業者か、乗っ取り屋か
1954年、ミルクシェイク用のミキサーを飛び込み営業で売り歩く冴えない営業マンのレイ・クロックは、ある日、一度に8台ものミキサーの注文を受けます。その発注主は、サンバーナーディーノのマクドナルドというお店。そこでは、ハンバーガーを紙に包んで売っており、プレートもフォークもなし、そして注文してから30秒という速さで商品を手渡すなど、画期的な販売システムで大人気でした。その店を運営しているのは、マクドナルドを姓に持つディックとマックの兄弟。効率よく商品を提供するシステムに感動したレイは、2人に店内を見学させてもらい、フランチャイズ化を持ちかけます。
しかし、マクドナルド兄弟は、品質を保てるかどうか心配で、なかなか首を縦に振りません。レイはそれでも諦めず情熱を見せ、質の管理を徹底し、内容変更の際は必ず兄弟の許可を取るという内容の契約書を交わし、合意を取り付けます。
レイは、イリノイ州デスプレーンズに「マクドナルド1号店」をオープン。さらに地元の資産家やレストラン経営者を抱き込み、フランチャイズを拡大させていきます。途中、資金繰りに苦しむ時期もありますが、財務コンサルタントに「これは飲食ビジネスではない、不動産ビジネスだ」と助言され、自ら土地を買収し、その土地をフランチャイズオーナーにリースするやり方で経営を安定させていきます。
そして、レイは経営内容の改革にも着手していきます。アイスクリームの冷凍のための電気代が利益を圧迫しているので、ミルクシェイクを粉状のものに変更しようと提案。品質が落ちることを心配したマクドナルド兄弟はそれを却下しますが、レイは勝手に変更を実行。そして、フランチャイズもさらに拡大させてゆき、遂には自社の会社「マクドナルドコーポレーション」を設立し、「創業者（ファウンダー）」となるのです。
『ファウンダー』とはなんとも皮肉なタイトルです。マクドナルドを創業したのはディックとマックの兄弟であり、ファストフードの効率良い販売システムを考案したのもこの2人。レイはそのシステムを乗っかり、フランチャイズを不動産ビジネスに仕立てることで巨額の富を築きました。
成功の条件は情熱か、面の皮の厚さか
レイがマクドナルドを見つけたのは50を過ぎてから。かなり遅咲きの成功者なのです。映画の中でも一度はフランチャイズ化を断られながらも情熱でマクドナルド兄弟を説得してみせます。
しかしながら、本作を観ると、そうした情熱だけではなく、彼には面の皮の厚さも備わっているように感じます。他人が作ったシステムに安々とタダ乗りしてしまえるし、契約内容も守りません。
それらの行動は人間としてはいかがなものかと多くの人は思うでしょう。しかし、そういう人間が大成功を収めているのもまた確か。アメリカを代表する大企業のトップのしたたかさと強欲さに戦慄をおぼえますが、これがビジネスの世界の現実なのでしょうね。
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