ラブストーリーとクライムサスペンスを得意とする韓国ドラマ。韓国の犯罪ドラマは日本のテレビドラマとは異なり、ハードな描写も厭わない点がある意味大きな魅力です。恋愛ドラマは3人、4人が絡む複雑な恋模様を描いたものが多く、多くの感情が入り乱れる描写が特徴的。現在ディズニープラスで配信中の『最悪の悪』は、そんな異なるジャンルの融合が楽しめる、過激なアクションクライムドラマです。
本作は、出世できない田舎の刑事が日韓をまたにかける麻薬組織に潜入捜査するストーリー。そこに、優秀な刑事である妻と、組織のボスとの特別な関係性が登場します。3人の愛の行方と潜入捜査の成否が密接に絡み合うラブ・サスペンス。使命と愛情の狭間で揺れ動く主人公の葛藤がスリル満点に描かれます。
麻薬捜査を巡る三角関係
1990年代、韓国の江南でDJをやっていた野心家のギチョルは、マフィアのジュンサから、組織のために働けばそのうち社長にしてやると言われます。しかし、一年たっても思ったほどの収益を出せず焦りを感じたギチョルは、麻薬の売買に手を出すことを画策します。組織はそれを許さず、ギチョルは報復のためジュンサを襲撃しますが、その際ギチョルの親友であるテホが命を落としてしまいます。
その後ギチョルは、純度の高い麻薬「江南クリスタル」を開発することに成功。ギチョルのグループは大きく成長し、一大麻薬組織へと変貌していくのです。
江南クリスタルは日本にも流通し、この拡大を防ぐために日韓合同の捜査本部が設置されることに。韓国側は、組織への潜入捜査に踏み切ります。そこで白羽の矢が立ったのが、主人公のパク・ジュンモです。彼の妻、ウィジョンも刑事で、夫よりも先にソウル警視庁に転属となり出世していきますが、ジュンモは父親が麻薬中毒者であることが理由でなかなか昇進が叶いません。
ジュンモは危険な潜入捜査に身を投じる見返りとして二階級特進を要求し、ギチョルの親友であるテホの従弟のスンホに成りすまして組織へと近付いていきます。しかし刑事である妻と会っているところをギチョルに見られ、疑いの目を向けられるジュンモ。しかも妻のウィジョンはギチョルの初恋の相手だったのです。
韓国のみならず、日本にも進出する巨大組織を率いるギチョルは、目的のためなら手段を選ばない冷酷な男。しかし、恋愛に関しては意外と純朴な面を見せます。学生時代にウィジョンにもらったペンダントを今も大事に持っていたり、「ウィジョンにふさわしいのは俺だよな」とスンホに成りすますジュンモに聞いたりして、知らぬ夫に対抗心を燃やすなど、ちょっと可愛い素顔を見せるのです。
ジュンモも、ウィジョンからかつての恋人の話を聞かされていたこともあり、2人の過去が気になって仕方ありません。危険な潜入捜査にもかかわらず、時折嫉妬心が顔を出してしまい、しばしば窮地に陥ることも。一方でウィジョンは夫の捜査を助けるためにギチョルにアプローチし始めるなど、恋愛と捜査の行方が複雑に絡み合う展開は視聴者を惹きつけ続けます。
このスリリングな状況を容赦ないバイオレンス描写とともに見せている点が本作の醍醐味。壮息をつく暇もないアクションの連続で非常に見応えのある内容に仕上がっています。
豪華キャスト陣の熱演にも注目
この物語を形作るメインキャスト3人の熱演も見逃せません。主人公のジュンモ役を演じるのは、これまで『ヒーラー~最高の恋人~』や『あやしいパートナー~Destiny Lovers~』などのラブコメ作品で高く評価されてきたチ・チャンウク。精悍なルックスで、本作では相手を殴る蹴るの大立ち回りを披露し新境地を開拓しています。
組織を束ねるギチョルを演じるのは、『イカゲーム』で若き警察官ファン・ジュノ役を務め、一躍人気俳優となったウィ・ハジュン。冷酷でありながらも義理人情に厚いギチョルを体現する、その繊細な芝居は注目に値します。
イジョンを演じるイム・セミも、クールで優秀な刑事役を好演し、作品を引き締めています。スリル溢れる潜入捜査の行方と共に、3人の関係性が一体どうなっていくのか、最後まで目が離せないストーリーです。
『最悪の悪』を見る(ディズニープラスで配信中)
韓国から日本へ流れる麻薬密売組織と戦うため、両国で始まった合同捜査。昇進を狙って犯罪組織に潜入する刑事ジュンモは、妻と組織のボスとの複雑な関係性に巻き込まれる。
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