生成AI元年である2023年以降、AIの台頭をテーマにした作品が数多く発表されています。AIロボットが殺人を犯す『M3GAN/ミーガン』のようにAIを脅威として捉えた作品もありますが、今回紹介する『ザ・クリエイター/創造者』はAIと人との共存を探る物語です。
ハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で知られるギャレス・エドワーズ監督が本作で描き出すのは、AI共存派とAI殲滅派の争い。この争いに巻き込まれる人々の姿を通じて、人とAIが共生できるか否かを問いかけます。
アジア的感性とAIとの相性を探る独自の視点
舞台となる近未来のアメリカではAIが開発した核兵器がロサンゼルスに放たれ、西側諸国はAIの廃棄を決定します。一方でアジア諸国はAIと共生する道を選び、アジア圏と西側諸国の対立構造が生まれます。そうした中、主人公である元特殊部隊のジョシュアにはAIの創造者・ニルマータを探す潜入任務が与えられますが、任務を進めていくなかで困難に直面します。
その後、ジョシュアは新たなミッションに挑みます。そして、その最中に子どもの姿をした奇妙なAIロボットと出会います。ある理由からそのAIを破壊するよう命じられたジョシュアですが、さまざまな憶測を抱える彼は軍に背き、その子どもを連れた逃避行を開始します。
西側諸国はAIを完全なる脅威と見なし、アジア諸国は共生可能性を探る、というユニークな発想の本作。『鉄腕アトム』や『ドラえもん』といった、AIに近しいキャラクターがすでに身近なものとして定着している日本を筆頭に、人間以外のものと共存し心を感じる感性はむしろアジアにこそある、というメッセージが込められているように感じられます。名優・渡辺謙も重要な役どころで出演し、渋谷でも撮影がおこなわれています。
AIとの向き合い方の違いから見えるもの
本作は、西側諸国の代表であるアメリカが、アジアのAI兵器を破壊するというミッションを軸に物語が進んでいきます。しかし、アメリカ側が「NOMAD(ノマド)」と呼ばれる大量破壊兵器を操っているという矛盾も同時に描いており、その政治手法に対する批判的な視点が前面に打ち出されています。
人とAIが争い合う未来を描いた『ターミネーター』シリーズ、AIの心に迫るスティーブン・スピルバーグ監督の『A.I.』、人とAIが育む愛について語ったスパイク・ジョーンズ監督の『her/世界でひとつの彼女』など、AIやロボットと人間との関係性をテーマにしたハリウッド作品は数多く存在します。本作は人とAIの共生を謳う貴重なストーリーであると同時に、娯楽映画としては珍しく自国アメリカの問題点を痛烈に指摘している点でも希少な作品です。
『ザ・クリエイター/創造者』を見る(ディズニープラスで配信中)
AIと人類の争いが激化した近未来。AIの創造者を探す潜入捜査に挑んだジョシュアは、“超進化系”AIの少女・アルフィーと出会う。やがて二人がたどり着いた衝撃の真実とは…
© 2023 Disney and its related entities