吉高由里子ら3人のタラレバ女に笑って泣ける共感エンターテインメント──ドラマ『東京タラレバ娘』

吉高由里子ら3人のタラレバ女に笑って泣ける共感エンターテインメント──ドラマ『東京タラレバ娘』

「あーあ、やり直したい。20歳くらいから」「欲しいのは、男か?金か?安定か?幸せな家庭か?」「次の一手がわからない……」。独身、彼氏なし、30歳。とりあえず、命はあるが先が見えない。苦しみを乗り越えた先にある悟りの境地が羨ましくも、そこにたどり着く前に絶対になんとかしたい。もはや絶叫に近い心の叫びは、アラサー女子のハートにグサグサと突き刺さります。

でも、男に振られた挙句の「よし、死のう」宣言に「いやいやいやいや」としっかり突っ込んでくれる女友達は、本当にありがたいものです。一人だったらかなりシリアスな状況を、笑いに変えてくれるのは友情のなせる業。そして、そんなダメな自分に冷や水を浴びせてくる男こそ、奇しくも真の救世主かもしれないのです。

ドラマ『東京タラレバ娘』に描かれる「タラレバ娘」とは、何かと理由をつけては集まり、「今よりダイエットしてきれいになったら……」「男に本気になれれば……」とタラレバ話で盛り上がっているうちに、いつの間にか恋愛から遠ざかってしまったアラサー女子達のこと。毎夜女子会を繰り広げる3人が、偶然出会ったイケメンに「そうやって一生、女同士でタラレバつまみに酒飲んでろよ」と冷たく言い放たれ、もう「女子」ではない自分達の現実に気付くことから物語は始まります。

「試合に出ないでベンチにいるだけ。そのくせ自信だけは満々で、いつでもホームラン打てるって思ってた」「若い頃は平気で捨ててきたものが、今となっては絶対に手に入らない」等々、おっしゃる通りのセリフの数々に、観ていて凹むほど共感できるこのドラマ。何かあるたびに、居酒屋のテーブルにガンガン頭を打ち付ける主人公の倫子(吉高由里子)の姿は気の毒ながらかなり笑えてしまいます。たらの白子とレバーの「タラレバ」コンビが突如しゃべりだしたり、惚れたり傷ついたりするたびに、背中に胸に矢が突き刺さったりするなど、アニメのような特殊効果もストーリーを盛り上げます。

あらゆることを年齢のせいにして、「ないよりはマシ」をいくつ重ねても幸せにはなれない。恋愛や人生にもがく男女の姿を通して、他の誰とも違う自分にとっての幸せとは何なのか、じっくりと考えるきっかけをくれる本作。東村アキコの原作コミックがもつシビアさをよりマイルドに、内容の軽さと深さがちょうど良い。人生にちょっと立ち止まり気味の女子におすすめしたい一本です。

動画配信サービスのHulu(フールー)では、『東京タラレバ娘』の全話が見放題です(2018年8月1日時点)。

タラレバ女達が現実と向き合い、自分の生き方を模索するストーリー

吉高由里子ら3人のタラレバ女に笑って泣ける共感エンターテインメント──ドラマ『東京タラレバ娘』

30歳を迎えた売れない脚本家・倫子は、長いこと恋をお休み中。3年後の東京オリンピックを一人で迎える未来を心底恐れつつ、高校時代の親友・香(榮倉奈々)と小雪(大島優子)の3人で集まる女子会が唯一の楽しみです。

ある日、昔告白されたことのあるドラマ制作会社のプロデューサー・早坂(鈴木亮平)から呼び出された倫子。ダサかった8年前とは違い、すっかり垢抜けた早坂の姿に「ありかも」と思っていた矢先、もう彼の想いは自分にはないことを知り、激しく動揺します。

さっそく「第4出動」(男絡みの緊急事態にかかる招集)をかけて女子会を開く3人。ガンガン愚痴る倫子を香と小雪が慰めますが、一人で呑んでいたイケメン(坂口健太郎)に「よくそんな何の根拠もないタラレバ話で盛り上がれますよね。静かにしてもらえませんか」と冷たく釘を刺されます。

イケメンから与えられた「タラレバ女」の負の称号にショックを受ける3人。後日、彼はKEYという、巷で話題の人気モデルだと知り、さらにモヤモヤが募ります。憎らしくもなんとなくKEYの存在が気になってしまう倫子。

そんな中、倫子には仕事上でもさらなるピンチが訪れます。仕事に恋に八方塞がりの倫子、その後、なかなか前進できない恋に悩む香と小雪、最終的に3人が導き出した真の幸せとは。そして、人知れぬ過去をもつKEYと倫子の今後の関係に発展はあるのでしょうか。

「ここから挽回できる気がしない……」と落ち込む倫子に「じゃあ、試してみる?」と無表情なKEYが近づくシーンはまさに必見。そうそう簡単には縮まらない、でも遠ざからない二人の距離には本当にドキドキさせられます。

舞台は表参道、青山界隈。恋が似合う街並みの冬の空気感や、倫子が住む古いアパートの味のあるインテリア、倫子や香のさり気ないコーディネートも見所の一つ。

仕事に恋に、もうひと花咲かせたくなる。タラレバ女卒業の為のヒントがたっぷりつまった作品です。