ディズニープラスで配信の始まった韓国ドラマ『カジノ』は、裏社会の大河ドラマのようです。韓国からフィリピンに渡り、カジノの帝王となった男の激動の人生を、これまた激動の韓国現代史を背景に描いています。
極貧生活の韓国からフィリピン裏社会の大物へ
フィリピン裏社会の大物でカジノ王のチャ・ムシクが逮捕されるところから物語は始まります。彼はなぜ逮捕されたのか、韓国人である彼がなぜフィリピンで大物としてのし上がっていったのかを回想形式で展開していきます。
ムシクは、幼い頃は韓国の田舎町でその日に食べるものにも困るくらいの極貧生活をおくっていました。彼の父は賭博を開いて暴力事件を起こし、収監されます。母はそんな夫に苦労させられながらも女手一つでムシクを育て上げるのです。
苦労を目の当たりにしてきたムシクは、自分で金を稼ぐ手段を身につけていきます。彼は幼少期からアリを捕まえて売ったり、新聞を定価よりも高値で売って稼いだりと、小さい頃から商売上手でした。
大人になったムシクは英語塾の経営で財を築きます。そんなとき、知人からカジノビジネスの話を持ち掛けられるのです。ムシクはカジノのポテンシャルに気が付き、自分でも経営することを決意。しかし、国税局に目をつけられ、フィリピンに逃亡するはめに。ムシクはフィリピンでもカジノ界の大物と接触することに成功し、成り上がっていきます。しかし、すべてが上手くいくはずもなく、殺人容疑の疑いをかけられて逮捕されます。
ドラマは、ムシクがカジノ王としてのし上がる過程に、彼の過去が挟まれる形で描かれていきます。ムシクが幼少期と青年時代を過ごしたのは1970年代から90年代で、2000年代にフィリピンへ渡ることになります。
ムシクが生きた時代は、韓国にとって激動の時代です。70年代の韓国は長期軍事政権が続き、民主化運動が勃興していたころ。80年代から経済成長と自由な社会が生まれ始めましたが、90年代には通貨危機による大不況を経験しました。ムシクは、そんな時代に這い上がっていくわけです。
本作に登場するキャラクターたちは、ほとんどが悪人です。いつ裏切られてもおかしくない緊張感が物語のテンションを持続させ、そういう中で描かれる絆の大切さや家族への想いが貴重なものに映ります。
名優チェ・ミンシク25年ぶりのドラマ出演
本作の主人公ムシクを演じるのは、韓国の名優中の名優、チェ・ミンシク。彼のドラマ出演は実に25年振りだそうで、それだけこの脚本にほれ込んだことが窺えます。
チェ・ミンシクと言えば、2003年の『オールド・ボーイ』を思い出す韓国映画ファンが多いでしょう。今や巨匠となったパク・チャヌク監督の出世作で、韓国映画初のカンヌ国際映画祭グランプリを受賞した傑作です。この映画で骨太の復讐者を演じたチェ・ミンシクですが、そんな彼の円熟した演技が堪能できる作品でもあります。
その他、共演陣も豪華。『イカゲーム』で悪役ドクスを演じて強烈な印象を残したホ・ソンテや、そのドクスと激しいラブシーンを演じたキム・ジュリョンが再共演を果たしています。『D.P. -脱走兵追跡官-』の大尉役で注目されたソン・ソックや、是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』にも出演していたイ・ドンフィなど実力のあるキャストが多数出演しています。
この重厚かつ滑稽さも含む物語を成立するのは、実力派のキャストが多数揃っているからこそ。主演のチェ・ミンシクは特に素晴らしく、人間の持つ弱さも強さも等身大で体現してみせてくれます。
本作は、まるで名作マフィア映画『グッド・フェローズ』の韓国版のような趣があります。犯罪ドラマ好きなら必ずハマることまちがいなしの作品です。
『カジノ』を見る(ディズニープラスで配信中)
チャ・ムシク、フィリピンのカジノを手に入れる!
持ち前の度胸を生かしながら、児童養護施設、刑務所、特殊部隊での生活を経て英語塾の講師までこなしていたムシクだったが、2000年にカジノバーの経営を始め、国税庁の査察から逃れるためにフィリピンへ逃亡する。
ムシクの優れた対応力と根性がミン会長に気に入られ、ムシクはフィリピンでカジノ経営を本格的に始めることになる。ムシクは知略を駆使してフィリピンの政財界をあやつり、キングメーカーのダニエルにまで会う機会を得て、カジノ業界でのし上がってゆく。
だが突然、ミン会長殺しの容疑をかけられ、敵対勢力とも闘ううちに逃亡生活を余儀なくされる。しかも信じていた後輩たちにも裏切られ、コリアンデスクであるオ・スンフンにも追われる。
金を巡って横行する裏切り、そして、もう後がない者たちが繰り広げる激しい一発勝負。最後に王座に就くのは果たして誰なのか。
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