iPad Proの新モデルがおよそ1年ぶりに登場しました。今回はボディを一新し、額縁が細くなった新しいデザインでのリリースです。まるで板のようなフラットに薄いデザインに進化しています。また、これまで10.5インチだった液晶サイズが11インチに大きくなり、充電もついにLightningからUSB-Cへと変わりました。
数え切れないほどの進化ポイントのある新型iPad Pro(第3世代)について詳しくレビューしていきます。
軽いけれどディスプレイが大きくなった
新型iPad Proは、11インチと12.9インチの2製品が登場しています。今回は11インチのモデルを中心に取り上げます。前モデルの10.5インチのiPad Proとサイズなどを簡単に比較してみましょう。
ディスプレイ | サイズ | 解像度 | 重さ(Wi-Fi/Cellular) | |
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新型iPad Pro | 11インチ | 247×178.5×5.9ミリ | 2388×1668ドット | 468グラム/468グラム |
従来のiPad Pro | 10.5インチ | 250.6×174.1×6.1ミリ | 2224×1668ドット | 469グラム/477グラム |
本体は微妙に軽くなりました。Cellularモデルは9グラムほど軽いのですが、実際に持ち比べてもほとんど違いはわかりません。またサイズもほとんど変わらず、厚みも微妙に薄くなりましたが、こちらも目視ではわからない程度の違いです。
ほぼ同じサイズで微妙に薄くなり、ディスプレイは0.5インチ大きくなったわけです。ただし、ディスプレイは縦方向の解像度が上がっています。現状では縦横比が合わないためか、表示で黒枠が出るアプリが少なくないのが残念です。
なお、ディスプレイは非常に明るく鮮やかで、スクロールへの追随も高速です。
新型iPad Proはデザインを一新した
従来の10.5インチモデル(右)と比べて、ディスプレイの占める割合がとても大きくなっている
上下の額縁が細くなってスタイリッシュに
本体の縁(フチ)が細くなったのでとてもスタイリッシュに感じますが、実は横の額縁は太くなっています。つまり上下方向の額縁が一気に細くなり、左右が若干太くなることで、周囲のフチの太さが近くなったわけです。見た目にはとてもスマートな印象です。
ホームボタンも廃止され、指紋センサー(Touch ID)の代わりにFace IDが搭載されました。認識率がとても高く、iPhone XSシリーズ同様に便利に使えます。操作性も変わり、基本的にはiPhone X以降のように、各種スワイプで操作することになります。こちらも、慣れてしまえばとても快適です。
側面まで厚みが変わらないフラットなデザインのため、実物を見るとやや厚く感じるかもしれません。ボディはアルミ製で、とても高級感があります。CellularモデルはアンテナのラインがiPhone 8などと同様の樹脂のスリットになりました。以前のようにパネルが変わっていないのでシンプルです。Cellularモデルでも重量が変わらなくなったのはいいところです。
ただし、2.5Dガラスが採用されていないのはちょっと残念。背面から見るとiPhone SEのような外観で、個人的にはちょっと斬新さが感じられないからです。
背面のデザインはiPhone SEに似ている
従来の10.5インチモデル(下)と比べると、下方向の額縁が細くなった。また液晶の角(カド)が丸くなっている
上が新型iPad Pro。従来モデルより横のフチが微妙に太くなっている
ディスプレイのコーティングは素晴らしく、映り込みが非常に少ない。右は一般的なタブレット
ついにコネクターがUSB-Cに進化した
ようやくLightning端子がUSB-Cに変わりました。Androidスマートフォンや最近のモバイルノートパソコンと同じACアダプターや各種変換コネクターが利用できるのは、非常に嬉しいポイントです。もちろんモバイルバッテリーからの充電も可能で、こちらもケーブルが使い回せます。
付属のケーブルは18WのUSB-PDです。PD対応バッテリーからは急速充電できるはずなのも、大変歓迎したい点です。また、外付けのキーボードを接続するのに利用するSmart Connectorも、位置が側面から背面へと変わりました。
チップは最新最速のA12X Bionicを搭載します。iPhone XSシリーズのiPhone A12よりさらに高速です。ベンチマークを計測しても、前モデルとの差は小さくありません。体感上のレスポンスも素晴らしく、一眼レフで撮影したRAWデータを読み込んで画像を編集してみましたが、ほとんどストレスを感じませんでした。ブラウザやSNSを使う程度ならその違いはあまり体感できないかもしれませんが、2年、3年と使い込むと差が現れてくるはずです。
なおスピーカーは上下に4つ付いていて、ステレオ感が抜群のとても素晴らしいサウンドです。1人で映画を観るなら、外付けのスピーカーがなくても満足できるでしょう。
USB-C接続に変わり、ACアダプターもUSB-C接続に変わった
スピーカーは上下に4つ付いている
専用のキーボードに利用するSmart Connectorの位置が変わった
従来のiPad Proのベンチマーク
新型iPad Proのベンチマーク。大幅に性能がアップしている
角度調整など使い勝手が向上したキーボード
純正のキーボード「Smart Keyboard Folio」が新しくなり、2段階の角度調整に対応しました。テーブルや机の高さによって使い分けられるのがとても便利です。また、背面までカバーが覆う形になったので、傷を防ぐカバーとしても利用できます。
キーボードを開くと電源が入り、スタンドに立てるとキー入力ができます。キー面を裏に回したりスタンド状態を解除するとスクリーンキーボードが使える状態になるなど、使い勝手も洗練されています。
基本的な設計は前モデルと同様で、キーの表面を覆う構造となっており、ある程度ラフに使っても大丈夫です。ただし、1万9800円という価格はかなりの負担です。安価なAndroidタブレットが買えてしまう金額なので、利用機会が多い人でなければ手を出しづらいでしょう。
キーボードは2段階の角度調整ができる
キーの構造は前モデルと同様
背面まで覆うスタイルになったので、カバーとしても有用だ
充電しやすくなった第2世代のApple Pencil
Apple Pencilが大きく変わったのも、手書き好きの人には朗報です。新しい2世代目となるApple Pencilは、タブレットやパソコンで使うスタイラスペンの中で、間違いなく最も進化しています。
初代モデル同様に白いボディですが、今度はつや消しに変わり、素焼きの陶器のような素敵な質感です。驚いたことに、本体の継ぎ目はほとんどわかりません。ペン先の部分だけが脱着できるようになっており、一体どうやって作られたのか疑問に感じてしまうほどのデザインです。
初代モデルはLightning端子を搭載しており、iPadに挿し込むなどして充電していました。ちょっと面倒だった上に、移動中などに充電すると折れてしまわないかとヒヤヒヤしました。2世代目のApple Pencilは磁石で本体にくっつくようになり、その状態でワイヤレス充電がされます。素晴らしい仕組みで、これなら充電の手間はかかりません。また、キャップをなくしてしまうこともなくなりました。
さらに本体にタッチセンサーが内蔵され、ダブルタップすることでペン先の種類を変えることもできます。この機能は、アプリ側でいろいろ割り当てられます。書き味も素晴らしく、ペンを倒すと太い線が書けるなど前モデルで優れていた点も継承されています。
新しいApplePencilは、表面の仕上げも変わりつや消しになった
書き味は文句なし。スタイラスの中で最も小さな字を書ける
磁石で本体にくっつくように変わっている
このように本体に取りつけて持ち運べる
まとめ:価格は高いが魅力的な進化を遂げた
魅力的な進化を遂げた新型iPad Proは、性能が高いこともあって、パソコン代わりに使うという人も少なくないでしょう。実際、様々な作業ができるので、パソコン専用のアプリを使いたいのでなければ代役としては十分。コンパクトで軽く持ち運べるのも素晴らしい限りです。
Apple Pencilやキーボードも高い完成度ですが、気になるのは本体を含めたその価格。11インチモデルで8万9800円から、12.9インチモデルでは11万1800円からとなっています。たとえば、11インチのCellularモデル(256GB)は12万3800円で、Smart Keyboard Folioの1万9800円、Apple Pencilの1万4500円と合わせて、計15万8100円(いずれも税別)となります。税込では17万円を超えてしまうのです。
とても高価ですが、3万7800円から購入できてApple Pencilにも対応する「iPad」もラインアップされています。ちょっと使うようなユーザーは通常のiPadでいいでしょう。毎日何時間も使うようなユーザーには、新型iPad Proをおすすめします。
構成・文:戸田覚
編集:アプリオ編集部