いつでもどこでも無料で音楽を楽しみたい。YouTubeの動画視聴を快適にしたい。そんな要望を叶えてくれるのが音楽ストリーミングサービス「Google Play Music」です。
Googleは2016年4月28日、Google Play Musicのファミリープランの提供を国内で開始しました。ファミリープランでは、月額1480円(税込)で代表ユーザー本人に加えて家族が5人までGoogle Play Musicを利用できるようになります。通常の月額料金は980円であるため、家族で利用するためには更に500円を足せばよい計算です。アップルの「Apple Music」と同額の料金プランを組んできました。
この機会に、課金の有無を問わず、類似する音楽ストリーミングサービスの中でGoogle Play Musicが最強たりうる理由を2つ紹介します(2018年3月時点において、理由2で紹介するサービスは国内で利用できません)。
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そもそもGoogle Play Musicは最高峰のひとつ
そもそもGoogle Play Musicを「定額制音楽聴き放題サービス」の側面から見た場合、同種サービスの中でも最高峰のひとつになっています。この点はあまり反論が出ないはずです。
楽曲数は最大級の3500万曲(2018年3月時点では4000万曲)に上り、再生環境を選ばず(Androidアプリ・iPhoneアプリ・ウェブブラウザ・Chromecastなどに対応、オフライン再生可)、その他の機能面でもレコメンドやランキング、ポッドキャスト(米国で開始済み)なども存在。「Apple Music」や「LINE MUSIC」、「AWA」、「Amazon Prime Music」などと比較しても、同等もしくは凌駕している面が目立ちます。反面、アーティストや他のユーザーと繋がるソーシャル機能は手薄となっています。
ところで、このGoogle Play Musicは「定額制」の「音楽聴き放題サービス」である点が喧伝されているためか、その時点で「お金を払いたくないユーザー」と「音楽に興味がないユーザー」の興味関心のアンテナに引っかかっていないように思えます。この点が非常にもったいない、と筆者は考えています。非課金ユーザーや音楽をあまり聴かないユーザーであっても、Google Play Musicに大きな価値を見出だせるはずだからです。
理由1:無料で5万曲までクラウド保存、各種デバイスでストリーミング再生可能
まず、非課金ユーザーにとってGoogle Play Musicが最強たりうる理由が、クラウドへのファイルアップロード機能の存在です。
勘違いしているユーザーが多そうですが、Google Play Musicは基本的に無料で利用できます。以前からAndroidデバイスにプリインストールされており、単なる音楽プレイヤーとして使えた事実を知っている人も少なくないでしょう。さらに月額料金を払って定期購入すると、膨大な数の音楽やミュージックビデオなど、いわゆる「定額制音楽聴き放題サービス」の各機能にアクセスできるようになるわけです。
Google Play Musicのアップロード機能
ここでGoogle Play Musicの真価が発揮されるのが、最大5万曲までGoogleのクラウドサーバーにアップロードし、各種デバイスでストリーミング再生できるロッカー機能を無料で使えるところ。一般的には手持ちの音源を全てアップロードしても5万曲に到達することはないため、実質的に無制限の音楽用クラウドストレージを手に入れたも同然です。スマホに音楽ファイルを置いておかなくても曲を聴けるため、端末内部ストレージの容量節約にも貢献します。必要に応じて音楽をダウンロードし、オフライン再生する選択肢もあります。
アップルのサービスである「Apple Music」と「iTunes Match」でもクラウド保存が可能ですが、いずれも無料で利用することはできません。
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理由2:YouTube動画の広告が消えるようになる(日本ではサービス未提供)
音楽をあまり聴かないユーザーにとってもGoogle Play Musicは見逃せません。その理由は「YouTube Red」との連動にあります。
YouTube Redは2018年3月時点では国内向けにサービスを開始していません。そのため、本項目の記載は、YouTube Red提供国(オーストラリア、韓国、メキシコ、ニュージーランド、米国)のみで当てはまる内容となっています。
「YouTube Red」は、YouTubeサービス全般の有料会員サービスで、動画の広告なし再生やオフライン再生、バックグラウンド再生、オリジナル番組の視聴などが可能となります。
この点、YouTube RedとGoogle Play Musicのサブスクリプション(定期購入)は共通となっていて、一方で有料会員になれば他方でも有料会員として扱われます。つまり、Google Play Musicの課金ユーザーであれば、YouTube動画が広告なしで再生できるようになるのです。世界最大の動画サービスが世界最高峰の音楽ストリーミングとタッグを組むわけで、競合サービスは「Google卑怯なり」と言いたくなるのではないでしょうか。
このYouTube Redは、Google Play Musicのファミリープランにも適用されます。これが非常にありがたい。小さな子どもがいる家庭だと、特にメリットを享受できるはずです。子どもと一緒に動画を適度に楽しむ家庭だと、動画の合間に挟み込まれる動画広告や時折表示されるバナー広告を自分の子どもにあまり見せたくない親御さんも少なくないでしょう。そこで、父親が代表ユーザーになってファミリープランに加入すれば、母親が自分のアカウントでログインしているYouTubeで広告なし動画を再生できるようになり、子ども達に不要な広告を見せずに済みます。
もちろん、広告の存在自体は悪ではありませんし、新たな商品やサービスとの出会いの場でもありますが、有料で消せる選択肢が提供されていることは1ユーザーとして歓迎せざるを得ません。動画をアップロードしているクリエイターに収益が適切に還元されることを望むばかりです。
なお、2018年3月時点では、YouTube Redは日本国内向けにサービスを提供していません。2016年内にサービスインするとの報道はありましたが、残念ながら今のところ国内で利用できない状況が続いています。
井の中の蛙、なのか
と、ここまでGoogle Play Musicが競合サービスの中では最強たりうる理由を2つ挙げました。しかし、有料音楽サービスの課題は、競合サービスとの競争というフィールドではなく、その外にあります。本当の競合は、ゲームであったり、無料の音楽サービス・動画サービスであったり、その他の時間と興味を消費する無数の何かだったりするからです。音楽業界の視点で業界の地盤沈下を防ぎたいと考えている限り、井の中の蛙にしかなれないのでしょう。
最後に、本稿執筆中にたまたま横にいた筆者の妻に「プラス500円でYouTubeの広告を消せてGoogle Play Musicも使えるようになるんだけど、どうする?」と尋ねた際の(筆者にとって)無慈悲な回答を掲載して記事を終えたいと思います。
「別に要らない。YouTubeは無料だし、広告はそんなに気にならないし。テレビだって同じでしょ。音楽も聴かないし」