子どもがiPhoneを持つ時代にも関わらず、13歳未満の子どもによるApple ID利用がグレーゾーンで不明瞭なままに捨て置かれている。Apple IDを始めとした各種Appleサービスの利用は13歳以上に限られているが、実際には親などのApple IDを使ってサービスを利用しているケースが多いようだ。
AppleサポートとSoftBank、au、ドコモに対し、子どものApple IDに関して尋ねてみた。
小学生がiPhoneを持つ場合の2つの壁
小学生から中学生くらいの年齢の子どもにiPhoneやiPadを持たせている保護者はどれくらいいるのだろうか。また、これからiPhoneなどを新規契約して、子ども専用の端末にしようと考えている保護者は多いのだろうか。
筆者が知る限り、首都圏で塾通いをしている小学校高学年の子どもたちの間では、iPhoneを始めとしたスマートフォンを自分用として与えられているケースが増えている。安全のために所持させるのならフィーチャーフォンで十分ではないかとも思えるものの、子ども用のモバイルデバイスがこの2、3年でフィーチャーフォンからスマホへ移行してきているのが現実だ。
ところが、子どもたちにiPhoneを持たせる場合、大別して壁が2つ存在する。一定の年齢を要件としている「キャリアなどとの通信回線契約」と「Apple IDの作成・利用(13歳以上が要件)」がハードルとなるのだ。
特に後者のハードルをどのようにクリアすべきかが問題となっている。
Apple IDは、App StoreやiTunes Store、iCloudなどAppleのサービスを利用する上で必須のアカウント。登録メールアドレスがApple IDとなる。有料アプリや音楽を購入する際にApple IDのパスワードを入力する場面でお目にかかる機会が多いかもしれない。Apple IDでログインしない状態でiPhoneを使用することも考えられるが、稀なケースだろう。本記事では、作成の具体的手順については特に解説しない。
壁1. 大手携帯会社などとの通信回線契約
大手携帯会社との通信回線契約については結局のところ特段問題にならない。
小学生以下(ドコモ、au)もしくは12歳未満(SoftBank)は子ども名義で回線契約を結ぶことはできない。その場合は、保護者名義で契約し、子どもに使わせることになる。
中学生(ドコモ、au)もしくは12歳以上(SoftBank)になれば子ども名義で契約できるが、名義や利用料の支払いをどうするかについては、家庭の判断に委ねられるというところだろう。
MVNOの格安SIMを利用するケースについては割愛する
壁2. Apple IDの作成・利用
他方、13歳未満の子どもとApple IDの関係については、Appleが子どものiPhone利用をおおっぴらに推奨していないため、正確な情報が入手しづらい状態だ。
筆者の結論から述べると、13歳未満の子どもがiPhoneを利用する場合、Apple IDは保護者名義で作成し、13歳以上の年齢に達して適切に管理できるようになったとき子ども名義に変更することが望ましい。
この結論は、後述するようにAppleの見解に基いている。
子どもにApple IDを使わせる3つの対処法
Apple IDの作成は13歳以上であることが要件
問題となるのは、前述のとおりApple IDの作成にはユーザーが13歳以上であることが要件とされていることだ。
想定される3つの対処法
AppleがApple IDの作成者を13歳以上に限定しiTunes Storeなどの利用者を13歳以上のみに許可している事実を前提にしたとしても、13歳未満の子どもたちがiPhoneを利用している実態に変わりはない。一見、整合性が取れていないようにみえる状態をどのようにクリアすればよいのだろうか。
前提1:保護者のiPhone(Apple ID)を子どもに貸与する形式を採る
まず、基本線としては、保護者が自身のiPhone(Apple ID)を子どもに貸与する形式を採ることになるだろう。つまり、形式上は保護者のものであるiPhone(Apple ID)を、実質的には子どものiPhone(Apple ID)として利用するということだ。おそらく、これ以外に方法はないものと思われる。
13歳未満の子ども自身が作成できない以上、保護者のApple IDを使わせるしかないはずだ。
前提2:Apple IDの家族間共有は避けるべき
また、Appleが公式サポートにおいて「Apple IDのアカウント情報は他の人と共有しないでください。一人一人別々のApple IDを持つ必要があります」と説明している点や、共有により発生する可能性がある問題(プライバシー問題など)を回避する点から、Apple IDの家族間共有は本来避けるべきだろう。
3つの対処法
以上2点を考慮した上で、筆者が挙げる具体的な対処法は次の3パターン。
- 保護者が自分の名前・年齢・メールアドレス(これまでApple IDに使っていない)で新規にApple IDを作成し、子どもに利用させる
- 保護者が利用している既存のApple IDを子どもと共有する
- 名前・メールアドレスは子どものもの、年齢は親のものを入力してApple IDを新規作成し、子どもに利用させる(これは望ましくないだろう)
- 13歳未満の生年月日だとIDを作成できない
筆者としては、1の方法を採用し、適切な時期に来たら子ども名義に変更することをオススメしておきたい。
子ども用のApple IDに関するAppleと大手携帯会社の見解
では、Appleや大手携帯会社(SoftBank、au、ドコモ)は、子ども用iPhoneのApple IDをどうするべきだと考えているのだろうか。
実際に、Appleサポートと各携帯会社およびキャリアショップに、13歳未満の子どものApple ID利用に関して尋ねてみた。
Appleサポートの見解
Appleでは次のような回答を得られた。
- 保護者名義でApple IDを新規作成して子どもに使わせ、将来、子どもの名前・生年月日・主要メールアドレスに変更することができる
- Apple IDを家族間で共有することが可能であるため、保護者のApple IDを子どもに使わせることができる
- 保護者の監督下で子どもにiPhoneを貸与することは問題ない
Apple IDはAppleのサービスであるため、Appleの見解が正しいはず。Appleは先ほど示した3つの対処法のうち1と2を紹介し、いずれも「特に問題ない」と断言した。
冒頭で述べたとおり、筆者としては1の対処法が本筋だと考えている。Apple IDは個人にひもづくことが原則であること、子どもが自らの意思で購入した有料アプリなどを13歳以降も継続して利用できることが理由だ。
なお、My Apple IDでApple IDの情報を編集できる。
大手携帯会社(SoftBank、au、ドコモ)の見解
次に、各携帯会社のサポートに対して電話問い合わせを実施し、加えて複数のキャリアショップで店員にも尋ねた。
サポートへの電話問い合わせ
各社はいずれも「Apple IDはAppleのサービスであり、自社としては適切な回答ができない」という見解を示した。
また、各社ともに、13歳未満の子どもにiPhoneを使わせる場合のApple IDの取り扱いについてはマニュアルがないとのことだった。
もっとも、マニュアルがないとしているものの、auとSoftBankでは対処法に関するアドバイスを受けることができた。
auでは、Appleサポートと同様に、1と2の方法を説明された。
SoftBankでは、1と3の方法(年齢のみを保護者のものにする)を紹介された。また、年齢は後から変更できないため、子どもの年齢に変更したい場合はIDを削除し改めて新規作成をする必要があると説明された(実際には名前や主要メールアドレスだけでなく年齢も変更可能なのだが)。
キャリアショップ
キャリアショップでも、基本的にサポートへの電話問い合わせと同様の対応を受けた。
auショップでは1と2の方法の紹介をしてもらえたが、ソフトバンクショップでは「ショップがIDを作成してiPhoneをお渡しするので大丈夫。お子様の名前と生年月日で作成できる」とよく分からない説明をされた。
ドコモショップでは「AppleのサービスについてはAppleに問い合わせるか、もしくはネットで検索してほしい」との回答を得られた。
今のところ、キャリアに聞いても無駄
電話サポートやショップとの実際のやり取りの詳細は省略するが、通信キャリア側にもキャリアショップ側にも適切なマニュアルが存在しないことを体験できた。iPhone販売の現場では一体どのような対応がなされているのか不安になってしまうところだ。
たしかに、「Apple IDはAppleのサービスであるためAppleサポートに聞いてほしい」と各キャリアの電話サポートが言うとおり、Apple IDに関してはAppleに聞くのが筋だろう。Apple IDがキャリア管轄のサービスではない以上、今回のケースでのApple ID取り扱いに関するマニュアルが存在しないのは当然かもしれない。
しかし、現実として子どもがiPhoneを使うケースが増えていると思われるため、1ユーザーとしては実態に合わせた対応を望みたいところだ。
最後に
今回、この記事を掲載するにあたって留意すべきことが1つあった。それは、Appleが規約上、13歳未満のサービス利用を原則として認めていないという事実だ。
しかし、Appleサポートに問い合わせた際、13歳未満の子どものApple ID利用に関して、サポートから詳しく説明を聞くことができた。それによれば、保護者の監督下で子どもにiPhoneを貸与することは問題ないということだった。
そのようなApple側からの回答を得られたので、記事掲載は問題ないだろうと判断した次第だ。
注意しておきたいのが、Appleは13歳未満の子どもたちにApple IDを"自由に"使わせてよいとは考えていないということ。他方で、保護者側には子どもにiPhoneを使わせたいというニーズがあり、実際に多くの子どもたちがiPhoneを使う中でApple IDを利用している現実がある。
本記事は、13歳未満の子どもたちがApple IDを利用することを推奨するものではないが、育児の現場で困っている保護者の一助になればと考え、子ども用のApple ID作成・利用方法を紹介した。