スマホは年を経るごとに大画面化しており、今や5.5〜6インチクラスが普通になってきました。しかし本体が大きいと、片手でのフリック入力がしづらいと感じる人も少なくありません。またデニムなどのポケットに入れると、ちょっとかさばります。
今回は小型のスマホとしてシャープが投入する意欲作、AQUOSシリーズの新モデル「AQUOS R compact(アクオスアールコンパクト)」をレビューします。コンパクトなスマホが好きなユーザーには見逃せない新製品です。
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キャリア版もSIMフリー版もラインナップ
AQUOS R compactは、各キャリア(au、ソフトバンク)から購入できるだけでなく、最近SIMロックフリーモデルも追加されました。
これまで、多くのスマホはキャリア向けまたはSIMロックフリーのどちらかしか扱いがなかったり、販売されているモデルが少し違ったりしていました。そこには、いわゆる大人の事情があるのでしょう。iPhoneだけは、ずいぶん前からキャリア、SIMロックフリー問わずに購入できています。AQUOS R compactは、Androidスマートフォンではその先駆けになっています。ほぼ同じ製品を自分の好みの回線で使えるのが嬉しいポイントです。
シャープのAQUOSシリーズには様々な製品がラインアップされていますが、最上位機は「AQUOS R」で、その小型版がAQUOS R compactです。多くのスマホが上位機は大画面、下位モデルはコンパクトというパターンが多いのですが、AQUOS R compactは上位機ながらコンパクトなボディが選べるというわけです。
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今回はAQUOS R compactをレビュー
写真はソフトバンク版。ワンセグのアンテナに使うアダプタが付属する
狭額縁設計でiPhone 8より画面が大きくボディは小さい
AQUOS R compactの実物を見ると、確かにコンパクトに感じます。他の機種とサイズを比べてみましょう。
サイズ | ディスプレイ | |
---|---|---|
AQUOS R compact | 132×66×9.6ミリ | 4.9インチ(2032×1080ドット) |
iPhone 8 | 138.4×67.3×7.3ミリ | 4.7インチ(1334×750ドット) |
iPhone SE | 123.8×58.6×7.6ミリ | 4インチ(1136×640ドット) |
さすがに4インチ液晶のiPhone SEよりは若干大きくなりますが、iPhone 8よりもコンパクトなのには驚きます。iPhone 8は4.7インチのディスプレイなのに対し、AQUOS R compactは4.9インチなので、画面サイズが大きくてボディはコンパクトなのです。これは、画面の周囲を細く設計した「狭額縁」だからです。
またコンパクトなモデルでも、画面は美しいほうがよいに決まっています。iPhone 8とiPhone SEはいま改めてみると、解像度が低く、やや時代遅れの印象があります。
手元にあったスマホと比べてみた。左からHUAWEI P9、AQUOS R compact、iPhone X。AQUOS R compactのコンパクトさがよくわかる
ボディの質感は上々、持ちやすいがやや厚みあり
高級モデルらしく、本体の質感は文句なしです。表面のガラスは2.5Dと呼ばれる縁(フチ)がアールを描いた高級タイプです。ボディの周囲は金属製で、背面は樹脂ですが、安っぽさはありません。インプリント成形により美しく、金属のようなメタル感があります。
注目したいのが、ボディサイドの造形です。よく見ると、山型を描くように真ん中が盛り上がっています。これは、机の上においてある状態でも掴みやすくした工夫で、他のAQUOSシリーズにも採用されている共通のデザインです。
背面は樹脂だが、金属のような光沢があって高級な質感
写真ではややわかりにくいが、本体の側面の真ん中が山型に盛り上がっている。机の上でつかみやすい設計だ
ここでも狭額縁が目を引きます。最近のトレンドにもなっており、下部分以外はフチがほとんどありません。ただし、上部にはカメラを内蔵するために液晶の切り欠きがあります。ここは好みが分かれるところですが、いろいろなアプリでカメラを使う際には、やはりレンズは上にあったほうが便利です。使っているうちに切り欠きは気にならなくなるはずです。
狭額縁はあらためて見ても新鮮
本体はやや厚みがあるので、スリムなスマホが好きな人は少しガッカリするかもしれません。スリムなiPhone 8などと比べると、2ミリ程度厚いのです。さらに、本体がコンパクトだから余計に厚く感じます。しかし、手にしてみるとこの厚さが持ちやすさにつながっていることがわかります。厚めのスマホは古めかしいデザインに感じることが多いのですが、狭額縁設計なのでそうは感じません。
ハイスピードIGZOはプレミアムだが有機ELとの差に留意
液晶はシャープ独自の「ハイスピードIGZO」を採用しています。わかりやすく言うと、一般的な液晶の倍の速度で画面を書き換えられるのです。たとえば、ブラウザをスクロールする際には残像感が少なくなります。画面に指先がぴったりと吸い付いてくるような印象は、やみつきになる人も少なくありません。このサイズにしては解像度も高く、付加価値は十分にあります。
しかし、最近の上位モデルでは主流になっている有機ELと比べると、色の鮮やかさや黒の締まりではかないません。どちらがよいかは好み次第です。
手前のiPhone Xと比べると、ディスプレイの鮮やかさで差がある
5.5インチ以上の大画面モデルを使っている人が買い換えると、動画や写真の迫力が少し物足りなく感じたり、文字が小さいと思ったりするでしょう。当たり前ですが、画面が小さいことをよく理解して選ぶべきです。特にアルファベット入力をする場合はキーが小さくなるので、店頭で一度テストしてみることをおすすめします。
気になる性能は、最高クラスとは言えませんが文句なしです。ベンチマークでも中の上といったところ。この性能なら2〜3年はストレスなく使えるはずです。もちろんヘビーなゲームも快適にプレイできますが、そもそもゲームが目的なら、もっと画面の大きなモデルを選ぶことをおすすめします。
ベンチマークの結果は上々
シングルレンズながら色鮮やかに撮れるカメラに満足
最近の中・上位モデルは、レンズが2つあるデュアルカメラの採用が目立つようになってきました。AQUOS R compactはレンズが1つなので、見た目のインパクトがありません。また光学ズームなど、レンズが2つだからできる特別な撮影もできません。
カメラはシングルレンズ。本体がコンパクトなのでレンズが大きく見える
しかし、普通に写真を撮ってみると画質は十分で、まず満足できるはずです。今回はiPhone Xと写真を比較してみますが、一般のユーザーが気になるような差はありませんでした。AQUOS R compactはシングルレンズながら最新の画像エンジンを採用し、より色鮮やかに仕上がります。
カメラの画素数は背面が16M、フロントが8Mと上位モデルとしては一般的です。
左:AQUOS R compactで撮影。右:iPhone Xで撮影。暗い室内での撮影はAQUOS R compactのほうがドラマチックに撮れた。iPhone Xのほうが自然だ
左:AQUOS R compactで撮影。右:iPhone Xで撮影。公園における撮影では、AQUOS R compactで撮った写真の空がやや白飛びしている
左:AQUOS R compactで撮影。右:iPhone Xで撮影。空を写すと、AQUOS R compactのほうが鮮やかでキレイに感じられた。もちろん、どちらがよいかは好みになる
左:AQUOS R compactで撮影。右:iPhone Xで撮影。花に近づいてマクロ撮影した。どちらも明るい部分がやや不自然になった
まとめ
AQUOS R compactはコンパクトなボディながら、いわゆる全部入りのモデルとなっています。おサイフケータイ、防水、ワンセグを搭載します。特にSIMロックフリーモデルでは、この3つに対応する製品があまりないので魅力的です。「通信費を安く抑えたいけれど、おサイフケータイは絶対にほしい」というユーザーには、数少ない選択肢の一つです。
国内メーカーのモデルらしく、メニューなどもわかりやすくなっています。価格はSIMロックフリー版で7万円台後半で、上位モデルとしては頃合いです。コンパクトだけど高性能なスマホを、末永く満足して使いたい人におすすめです。
SIMはキャップの下にセット。PINなしでも装着できるので、海外旅行での差し替えでも困らない
充電はUSB-C端子。QuickChargeにも対応する
構成・文:戸田覚
編集:アプリオ編集部