ゾンビよりも人間が恐ろしい、極限状態のヒューマン・ドラマ『ウォーキング・デッド』

2018-01-22 10:15

ゾンビよりも人間が恐ろしい、極限状態のヒューマン・ドラマ『ウォーキング・デッド』

「ゾンビ」と聞くと、多くの人が気色の悪いホラー映画をイメージすると思います。ひとつのジャンルとして確立されてはいますが、その人気はあくまで一部のマニアによるカルト的なものと思われがちです。しかし、それを覆し、女性も含めた多くのファンを獲得したのが米国のドラマシリーズ『ウォーキング・デッド』です。

2010年から放送開始され、毎年新シーズンが制作され続け、現在シーズン8が放送中の本シリーズですが、ゾンビの造形に苦手意識を持つ人も少なくない中で、全米で高視聴率をキープし続けており、ゾンビファンの垣根を超えて支持されています。

これほどの人気の理由は、本作はホラーの要素もありながら、人間ドラマに焦点を当てている点にあります。生き残った人たちが協力して危機に立ち向かうヒューマニズムの要素を強く押し出し、さらには生き残った人間同士の抗争を描くなど、人間が極限状態に追い込まれた時にどうするのかを丹念に描いているのが最大の特徴と言えるでしょう。

普通の人々の必死のサバイバル

ゾンビよりも人間が恐ろしい、極限状態のヒューマン・ドラマ『ウォーキング・デッド』

本シリーズのあらすじは、ある日突然何らかの原因でゾンビ(主にウォーカーと呼ばれます)が溢れた世界で、主人公のリックを始めとする登場人物たちが、生き残りをかけてウォーカーたちと対峙しながら安住の地を求めて旅をしていくというもの。

旅の途中、生き残った人間たちとの出会いや別れ(死別も含めて)を繰り返しながら、主人公たちは哀しみ、時には絶望しながら、生きるために旅を続けます。

本作に登場するキャラクターたちは、特別な能力や地位を持っているわけではなく、ほとんどが平凡な暮らしをしていた人たちです。少ない生き残りの人々が、人種や年齢の垣根を超えて協力し、戦っていく姿は、本作の共感を覚えるポイントでしょう。

多くのキャラクターが家族などの大切な人を失っていきますが、その度に仲間たちが支え、悲しみを糧に成長していきます。長いシーズンの中で、キャラクターたちが成長していくのを見届けられるのもこのシリーズの面白いところでしょう。

特にシーズン1から登場するダリルという野性味のあるキャラクターは、シリーズ屈指の人気を誇っています。登場時はトラブルメーカーのような立場だったダリルは、次第に仲間たちに心を開くようになり、現在では主人公グループの中心的な存在になっています。

成長という点では、主人公リックの息子・カールも見逃せません。シーズン1では10歳の何もできないひ弱な少年だったのですが、過酷な環境にどんどん対応していき、銃の腕前も上達し、前線で戦うようになっていきます。思春期の少年特有の無謀さも併せ持っているので、ヒヤヒヤする場面もありますが、とても頼もしく成長していきます。

本当に怖いのはウォーカーより人間

ゾンビよりも人間が恐ろしい、極限状態のヒューマン・ドラマ『ウォーキング・デッド』

しかし、本作が出色なのは、人間のきれいな部分だけを見せるのではなく、醜い部分もきっちりと描いているところでしょう。それも敵役によってそれを描くのではなく、主人公たちにもそうした感情があることを描いているのです。

主人公のリックとその妻・ローラと保安官時代のリックの相棒・シェーンとの三角関係や、当初は生き残るための殺人を避けていたリックも次第に、生きるためには先制して人を殺すことを辞さなくなり、時には助けを乞う人を見殺しにするなど、本作は極限状態で人間が生きるには「きれいごとだけじゃ、やっていけない」という過酷な現実を突きつけてきます。

物語は次第に、ゾンビ対人間よりも、人間対人間の構図になってきており、生き残るため、あるいは欲望や狂気に駆られた人間たちは、ゾンビなどよりよっぽど恐ろしいものだと思わされます。そんな狂気に、時には主人公たちもとらわれてしまい、間違いを犯すこともあるのですが、それでも仲間の助けによって人間性を保っていく。

ウォーカーよりも恐ろしい人間、それでも仲間との絆に感動させられる振幅の大きさが、本作の最も大きな魅力でしょう。

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構成・文:杉本穂高

編集:アプリオ編集部