夢を諦めてしまった人たちの笑いと涙の復活劇、映画『SING/シング』

2018-10-06 13:34
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夢を諦めてしまった人たちの笑いと涙の復活劇、映画『SING/シング』

海外のアニメーション映画といえば、ディズニーが圧倒的な存在感を持っていますが、ディズニーに迫るクオリティの作品を製作している会社があります。それはイルミネーション・エンターテインメント。

『怪盗グルー』シリーズで知られるイルミネーションは、2010年に初めて製作した『怪盗グルーの月泥棒』が世界中で大ヒットを記録。作中に登場する黄色いキャラクター・ミニオンズの憎たらしくも可愛いキャラ造形が世界中の人の心を捉えました。ディズニーとは違い、少しの下品さとドタバタコメディ要素の強い作風でその後もヒット作を連発、今ではディズニーに次ぐアニメーションスタジオとしての地位を確立しています。

そんなイルミネーションが満を持して製作したのが、往年の名曲から最新ヒット曲までふんだんに使い、夢を追うことの素晴らしさを描いた『SING/シング』です。一癖も二癖もある個性の強いキャラクターたちが、周囲の嘲笑をはねのけて歌手になる夢を追ったミュージカルアニメーションであるこの映画は、それまでのイルミネーションの作品とは違う爽やかな感動作となっています。

得意のコメディセンスを活かしつつ、多様なキャラクターの成長ドラマにもなっていて、世界中で大ヒットを記録。ゴールデングローブ賞にもノミネートされるなど、高い評価を獲得しています。

映画を盛り上げる古今東西のヒット曲

コアラのバスターは、古びた劇場の支配人。バスターはかつての黄金時代の盛り上がりをなんとか取り戻したいと願っていますが、現実は借金も払えず劇場は倒産の危機。この窮地から脱するためにバスターは、オーディションを開催して目玉興行にしようと考えます。しかし、優勝賞金1000ドルで募集するつもりがプリントミスで10万ドルと記載されたチラシが出回ってしまい、大混乱に。しかし、そのかいあってかオーディション希望者は殺到しますが、集まったのは問題だらけの連中ばかり。

主な舞台が劇場で、歌と踊りのシーンがふんだんに盛り込まれているのが本作の大きな特徴。誰もが一度は聞いたことのある大ヒット曲の数々が見事な歌唱力と素晴らしいアニメーションで再現されています。

一例を挙げると、フランク・シナトラの『マイ・ウェイ』、レディー・ガガの『バッド・ロマンス』、ビートルズの『ゴールデンスランバー』や、意外なところではきゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』も使用されています。

それらの名曲の数々を、英語版ではアリアナ・グランデやスカーレット・ヨハンソン、日本語吹替え版ではMISIAや坂本真綾など錚々たるメンバーが歌っています。本作は字幕版・日本語吹替え版共にクオリティが高く、どちらで鑑賞しても満足度の高い作品となっています。

可愛いけれどアクの強い個性派キャラたち

本作はディズニーの『ズートピア』と同じく動物たちが擬人化された世界です。『ズートピア』は哺乳類しか登場しませんが、こちらは爬虫類や両生類、魚類も登場し、様々な種が共存して生きています。多様なのは種だけではなく、キャラクターたちも非常に個性の強い連中ばかり。

主人公のコアラのバスターは小狡い性格をしているのにコアラの風貌のせいか、どこか憎めません。オーディションを合格するキャラクター達も個性的かつ、それぞれの人生に問題を抱えていて、とても濃密なドラマが展開されます。ブタの主婦・ロジータは家事と育児に追われて自分の夢を見失っていました。引っ込み思案の象・ミーナは極度の上がり症。身体は小さいけれどもプライドは人一倍大きいネズミ・マイクなど、それぞれが欠点を抱えていて、仲間の助けを借りながら克服していく様も本作のドラマの大きな柱となっています。

この映画の登場人物は持っていた夢を一度は諦めてしまった者ばかり。これはそんな連中がオーディションを通じて集まり、かつての夢を叶えるという、挫折した者たちの復活劇なのです。夢はだれでも叶えられるものではないかもしれません、諦めてしまう人のほうが世の中には多いものです。それでも情熱が心の片隅に残っていたら、この映画の登場人物たちのように、もう一度立ち上がれるのかもしれません。笑って泣いて、最後には勇気も与えてくれる快作です。

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構成・文:杉本穂高

編集:アプリオ編集部