松本穂香と松坂桃李、激動の世を生きる温かい夫婦の絆──ドラマ『この世界の片隅に』

2018-08-30 13:00
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松本穂香と松坂桃李、激動の世を生きる温かい夫婦の絆──ドラマ『この世界の片隅に』

今日あったことを誰に話そう。今夜は何を食べよう。毎日同じことの繰り返しでも、戦火に怯える日々でも、まともな自分を支えてくれるのはささやかな日々の営み。住むところや時代に関係なく、そんな小さな思いを一緒に紡いでいける人が自分の居場所になっていくのかもしれません。

ドラマ『この世界の片隅に』は、太平洋戦争の真っ只中、絵を描くのが大好きな優しい少女が、嫁ぎ先の広島・呉で戦乱の世を明るく、夫と前向きに生き抜く姿を描いた物語。原作となるのは、累計発行部数130万部を突破した同名マンガ(著・こうの史代)。2011年に日本テレビでドラマ化、2016年には劇場アニメーション映画が公開後ロングラン上映され、数々の映画賞を受賞するなど、ストーリーのオリジナリティが高く評価されています。

人一倍おっとりしていて、想像力豊か。時間はかかるけれど物事の本質をしっかり捉えることのできる主人公・北條すずを演じるのは、度重なるオーディションで見事この役を勝ち取った松本穂香。そのすずを幼少期に見初め、結婚後も優しく見守る夫・周作を、振り幅の大きい役どころも見事にこなす松坂桃李が好演しています。

荒天の世の中でただ「在る」ことの喜び、男性特有の鈍感さ、嫁・姑・小姑の微妙な心理戦、人間らしいちょっとした意地の悪さやさりげない思いやりなど、人々の気持ちの営みを丁寧に描いた作品。明日爆撃されるかもしれない日々をあなたならどう自分らしく生きるか、すずの優しい問いかけを随所に感じる名作です。

七転び八起きの夫婦物語

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昭和9年、広島市江波の町で幼少期を過ごしていた浦野すずは、絵を描くのが好きで少しおっとりした少女。おつかいに行ってもついつい座り込んで写生を始めてしまいます。そんなある日、河原で一人絵を描いていたすずは人さらいに捕まってしまい、居合わせた少年と必死で逃げ帰りました。白昼夢のような記憶です。

時を経て昭和18年。相変わらずのんびりしていて心優しい18歳に成長したすずに、突然縁談が舞い込みます。自宅を訪ねてきたその相手は、すずを知るという見覚えのない文官・北條周作。誠実な人柄の周作に両親は喜び、縁談は急ピッチでまとまります。

呉の山の上で水道も通わない北條家。慣れない井戸での水汲みや、足の悪い姑・サン(伊藤蘭)への気遣いなど、何かとストレスが溜まる結婚生活の中、気が強く嫁ぎ先と折り合いの悪い周作の姉・径子(尾野真千子)が娘を連れて実家に帰ってくることに。

北條家に嫁いでわずか1カ月。暇をもらって実家に帰ったすずには、十円はげができていました。温かく迎え入れてくれた実家に感謝しながらも、その先を思い悩むすず。そんなすずの脳裏に浮かんだのは、人さらいから必死で逃げたあの出来事でした。あの時一緒にいた少年は、もしかしたら周作だったのかもしれない。すずの足は再び呉を目指します。

非常時でもただひたむきに生きる人々のかけがえのない日常

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日に日に乏しくなっていく食料や激化する戦況に耐えつつ、前向きに生きる登場人物たち。一時の不安を忘れて楽しむお花見や、贅沢が許されない状況で初めて食べるアイスクリーム。「逢引き」という名のデートなど、チャーミングなエピソードやささやかな笑いが宝石のように散りばめられたストーリー。

顔を見ると気持ちがほぐれて力が出てくる。とにかくキツイ小姑の径子や、周作への失恋に苛立つご近所の幸子(伊藤沙莉)など、嫁ぎ先で待ち受けるキャラ濃い目の面々がそんなすずを徐々に受け入れていく様子は印象的です。

一方、夫に惚れ込むすずが知ってしまう、周作の過去の恋愛は深い事情を抱えている様子。すずの幼なじみに対する淡い初恋も周作の嫉妬心を刺激します。「誰でもなんか足らんくらいで、この世界に居場所がなくなったりせんよ」と、心にじわっと沁みるセリフが数多く飛び出すのもこの作品の魅力です。

傍らにいる人と自分の居場所を作っていく。見ている方向が一緒なら、なんとか乗り越えていける。そう告げる、すずと周作が一生懸命生きた証の物語です。

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