シャープがAQUOS PHONE ZETAに託した「使えるスマホ」の未来

シャープは11月29日にスマートフォンの新機種「AQUOS PHONE ZETA」を発売した。同モデルはドコモの冬モデル10機種の中でも高い評価を獲得している。
業績不振が続くシャープだが、スマートフォン市場で国内メーカーの逆襲を先導しそうな「AQUOS PHONE ZETA」の魅力に迫ってみたい。

利用者の要望に応えたスマホAQUOS PHONE ZETA

AQUOS PHONE ZETAは高い前評判そのままに販売も好調で、12月上旬の段階では店頭でも品切れ入荷待ちが続出している。
AQUOS PHONEはそこそこ人気のあるブランドだが、GALAXYやXperiaといったシリーズの前に、なかなかこれといった存在感を示せていなった。しかし、今回はどうも様相が異なる。
なぜAQUOS PHONE ZETAはそんなにも人気があるのだろうか?

AQUOS PHONE ZETAのスペック

まず、簡単にスペックを確認。
AQUOS PHONE ZETAは約4.9インチのHD液晶(720×1280)に1.5GHzクアッドコアCPUを搭載し、Xi(LTE)、NFC、おサイフケータイ、防水、ワンセグ、赤外線、NOTTVに対応する全部入りモデル。
現時点では最高クラスのスペックを持つスマートフォンの一つと言えるだろう。

参考:AQUOS PHONE ZETA SH-02E スペック

最大の特徴は高スペックではなく、バッテリー持ちの良さ

だが、AQUOS PHONE ZETAが特に支持されているのは、単にハイスペックだからではない。
同じようなハイスペックスマートフォンである「GALAXY S III α SC-03E」や「ARROWS V F-04E」と比べても高い人気を得ている理由、それは「AQUOS PHONE ZETAがバッテリー持ちの長さ」にこだわったスマートフォンだからだ。

実際に、AQUOS PHONE ZETAのテレビCMの「もう、充電を気にしない」「心おきなく、2日間」という衝撃的なキャッチコピーを目にした消費者による指名買いが多く、販売好調の要因になっているとのこと。
AQUOS PHONE ZETA

バッテリー持ちはユーザー最大の関心事

それもそのはず。様々な調査会社が公表しているスマートフォン関連のアンケートにおいて、「スマートフォンの不満点は?」という設問への回答は、「バッテリの持ち」がトップに居座り続けている。

参考:

スマートフォンを使っているユーザーでは、1日2回充電というのも当たり前となっており、それが理由でフィーチャーフォンを手放せないという人は多い。
この問題に対するシャープの回答が、「心おきなく、2日間」を謳うAQUOS PHONE ZETAであり、多くのユーザーが関心を持つのは当然と言えるだろう。

シャープが描く「使えるスマホ」像とは?

シャープが命運を賭ける「IGZO」


省電力に優れるIGZO液晶

省電力に優れるIGZO液晶

冒頭にも述べたが、シャープは企業として現在非常に厳しい状況に置かれている。
秋ごろに富士通への携帯電話事業売却も検討されるなど、スマートフォン事業の未来展望ができるのか危うい立場ですらある。

しかし、その一方で、スマートフォンやタブレットだけに留まらず、多くのデバイスメーカーにとって垂涎の技術が、高精細・省電力という特徴を持ち、AQUOS PHONE ZETAにも採用されている「IGZO液晶」だ。
技術自体はSamsungやLGにもライセンスされているが、いち早く量産化、スマートフォンへの搭載に成功したシャープはこのIGZOに社運を賭けている。

AQUOS PHONE ZETAの妥協なき仕様

AQUOS PHONE ZETAは前述のとおり、バッテリー持ちが特徴のスマートフォンだ。だが、単にそれだけのスマホではない。ユーザーの声に可能な限り応えようとした、妥協なき仕様が詰まっている。

まず、バッテリー持ちと相反する部分である画面サイズはトレンドの大画面4.9インチサイズを採用。本体サイズを大きくすることで大容量バッテリーの搭載を可能にした上で、IGZOの省電力性を最大限に活かしている。

また、クアッドコアプロセッサや2GBのシステムメモリーを搭載するなど、性能は現時点のスマートフォンでも最高のものを用意している。

さらに、AQUOS PHONE SH-01Dで好評だった光学手振れ補正機能付きの1630万画素カメラを搭載。声でシャッターを切る「ボイスショット」機能もあり、カメラの性能や使い勝手も最高に近いものを実現している。

このように、ざっと見ただけでも、現時点で考えうる最高のものが詰まっているスマートフォンになっているのが分かる。

シャープが実現したかった「当たり前に使えるスマホ」

IGZO液晶を除けば、個別の仕様については、他のスマートフォンメーカーであっても決して不可能なレベルのものではない。しかし、シャープは妥協することなく、最高の技術を一つの端末に収め、ベストの端末とも言える「AQUOS PHONE ZETA」を生み出した。

なぜシャープはそこまでしたのだろうか?

もちろん、IGZO液晶を搭載する以上、ヒット作にならなくてはいけないという面もあっただろう。

しかし、「終日バッテリーが持つスマホ」「動画でもゲームでもサクサク動くスマホ」「手振れしない写真が撮れるスマホ」「メモリ容量が足りなくならないスマホ」というような、ユーザーが真に求め続けていながら、なかなか実現しなかった「なんでも当たり前に『使える』スマホ」をいち早く実現したかったからではないだろうか?

AQUOS PHONE ZETAは完璧なスマートフォンではない。
しかし、きっと「完璧を目指したスマートフォン」ではある。
苦境にあえぐシャープが、日本のスマートフォンメーカーが、世界に打って出ることができるスマートフォン誕生の日はそう遠くないのかもしれない。