レビュー:Android史上最高の" L"、初めてiOSの"触感"を超えた

2014-07-06 20:20

Android L ナビゲーションバー

Googleは6月26日より、開発者向けにAndroid OS最新バージョン「Android L」のプレビュー版を公開している。Nexus 5にインストールして数日使ってみたので、ユーザーが大きな変化を感じるであろう部分を中心にレビューしてみたい。

Android LをインストールしたNexus 5を起動した時の第一印象は、「新鮮味を感じない」ということだった。

デフォルトホームアプリはGoogle Nowランチャーであるため、Android 4.4 KitKatと同様にステータスバーと下部メニューが透過されている点は変わらず、一新される予定の各Google製アプリのアイコンも旧デザインのままだからかもしれない。ホームスクリーンをパッと見て分かるのは、下部のナビゲーションバーのデザインが変更されていることと、デフォルト壁紙が変わったことくらいだ。

しかし、少し触ってみれば、すぐに着実で大きな進化に気がつく。Android Lの楽しさと心地よさは、触ってみないと分からないだろう。そして、「AndroidがiOSの"触感"を超えた」と筆者は感じさせられた。

通知スタイル

まず、便利になったのが通知のスタイルだ。Android Lでは、通知がGoogle Nowをイメージさせる白っぽい背景のカードになった。

Android L ロックスクリーンの通知

iOSのようにロック画面に通知カードが表示されるようになり、ダイレクトに通知を確認し、処理できる。消したければ左右にスワイプすればいいし、通知カードを下スワイプすれば拡大し、カード上で処理を選択できる通知もある。

Android L Heads Up 通知

ゲームで遊んでいる最中でも、電話などの緊急性の高い通知に遮られずに済むHeads Up機能を採用したことも嬉しい。アプリを立ちあげている時は、上部に通知カードが表示され、通知カード上で着信拒否や応答を実行できる。ストレスを感じずに済む設計になった。

マルチタスクメニュー

最近使ったアプリを表示するマルチタスクメニューも大きく変化する。機能的には最も変わる部分かもしれない。

Android L マルチタスクメニュー

ユーザーインターフェース(UI)面では、各アプリのカードが前後方向に回転するカルーセル方式で表示されるようになったことに注目すべき。だが、その方式は、Android Lで全面的に採用されたマテリアルデザインに引きずられすぎた感があり、従来のように起動中のアプリが上下方向に移動する形の方が視認性に優れていたように思える。もっとも、それも慣れの問題かもしれない。

むしろ、マルチタスクメニューで使い勝手が変わるのは、Chromeの各タブも混ざって表示されるようになる点だ。今のところプレビュー版では新機能を利用できていないが、今後のアップデートでChromeの各タブがアプリと一緒に表示されるようになると、タブ数次第では煩雑になりかねない。

今後、アプリ開発者向けに同機能を開放する予定であるため、アプリごとに複数のカードが表示されるケースも出てくるはず。そうなると、現状のままではユーザビリティを阻害しかねない。無秩序な回転式の名刺ホルダーを思い浮かべてもらえば、イメージとしては遠くはないだろう。

デザイン:Material Design

新バージョンのAndroidにおいて、Googleがもっとも強く打ち出したのは、「マテリアルデザイン(Material Design)」と名付けられた新しいデザインコンセプトだ。「マテリアル」は、物質(モノ)と訳するのが最適だろうか。

Google マテリアルデザイン

現実世界の物質(モノ)を意識させる奥行き設定と意味のあるアニメーション、印刷ベースでルール化されたデザインとタイポグラフィ、スペース、画像レイアウト、カラースキームによって直感的なUIを実現しているのが特徴。モバイルだけでなく、ラップトップ、デスクトップにも採用されていくことで、ユーザーは統一的な体験を得ることができる。

Z軸設定

特に効果的だと感じたのは、各要素にZ軸(奥行き)を設定することで、リアルタイムに影を描写し、階層構造を表現できること。Z軸をユーザーに明確に意識させ、要素の移動や変化をアニメーションで直感的に理解させられる。

Android L Z軸

実際の世界のように、影と色で区別されるマテリアル(物質)が画面の中に存在しているように感じられるのは、情報を載せたカードの積み重なりを表現できるZ軸の設定の影響が大きい。

効果的なアニメーション

また、忘れてはならないのは、カードやボタンなどの要素を自然かつ滑らかにアニメーションさせられている点。これが、マテリアルの存在感を高めている。

アニメーションの速度や、要素の挙動が非常に心地よい。主張しすぎず、さりげなく楽しさを織り交ぜている印象だ。

たとえば、次のようなアニメーションは、派手ではないものの、しっかりとその役割を果たしてくれている好例だろう。

  1. アプリの立ち上げ時、画面下からアプリのフルスクリーンがさっと引き上げられる。Z軸の設定と相性が良く、下部ナビゲーションバーのさらに下(画面外)に隠されたアプリ画面が、するするっと引き出されてくる感覚だ。
    Android L フルスクリーン
  2. タップ時の波紋の開始位置が、タップした位置を起点としており、動作に対応したものであることを分かりやすくしている。タップ可能範囲を水面に見立てると、タップした場所に石を投げ入れたと考えてもらえばよい。例えば、電卓アプリでは、計算結果を消去する際に「DEL/CLR」ボタンから波紋が広がっていく。
    Android L 電卓アプリ
  3. ステータスバーから通知カードを引き下ろすときに少し下までスワイプすれば、通知の上に隠れているクイック設定の一部がちらりと見える。まだ奥に隠されたマテリアルがあることを上手く示唆している。
    Android L クイック設定

ナビゲーションバーの変更

システムナビゲーションバーのデザイン変更も、違和感なく受け入れられた。むしろ、違和感がなさすぎるくらいだ。

左の三角ボタンが「戻る」をイメージさせるし、右の四角はマルチタスクメニューでカードが束になって表示されることをイメージさせるからだろうか。また、中央の丸がホームボタンであることを学習するコストは高くない。

バッテリー持続時間の増加

Android L 電池

バッテリー持続時間が体感的に伸びている。これは、Project Voltaと呼ばれる一連の改善の成果だろう。

AndroidがiOSの"触感"を超えた瞬間

次は、Android 5.0か

通知機能やマルチタスクメニューなどのUI面での前進、デフォルトランタイムのDalvikからARTへの変更やProject Volta、グラフィックス性能の向上などのパフォーマンス面での改善など、大幅な変化の波が旧来のAndroid OSを文字通り過去の物としてしまうだろう。Android Lのコードネームが、噂される”Lollipop”になるのか否かは不明だが、インパクトの大きさからすると次期バージョンは4.5ではなく5.0となるのではないだろうか。

統一性のあるUX

そして、Androidそのもののバージョンアップ以上に重要な変化は、マテリアルデザインによって、OS、アプリ、モバイルウェブ、PCウェブを通した統一性のあるユーザー体験(UX)の提供を、Googleが一貫して推し進めるという点に尽きるだろう。

マテリアルデザイン

Androidにおけるデザインをシンプルで美しいものとするべく、GoogleがAndroidアプリ開発者向けサイト「Android Design」を公開したのが2012年1月のことだった。今回のGoogle I/Oで公開した開発者向けサイトの名前は「Google Design」で、詳細を確認せずとも、それが「Googleが関わる全てのデザインガイドラインである」ことは明白だ。

今後、Googleのプラットフォームで開発をおこなう開発者、デザイナーは、このガイドラインに則ることが求められる。また、ウェブ向けにはPolymerというフレームワークを通してマテリアルデザインを提供していくことになる。

"触感"でiOSを超えた

4.1 JellyBeanでAppleのiOSに追いついた(もしくは、超えた)とAndroid OSを評価する見解を見聞きすることが、これまで少なくなかった。そして、Android Lを使っていると、そういった意見を表明する開発者やユーザーがより多くなるのは間違いないと思える。そこにはもはやAndroid 2.x時代のような明らかな差はなく、いずれを選択するのかはユーザーの好み次第でしかない。

筆者は、iPhoneとAndroidスマホを併用しているが、「ユーザーインターフェースの"触感"という点で、初めてAndroidがiOSを超えた」という印象を受けた。まだ、Android Lのほんの一部しか体験していないのでその印象に確信は持てないが、マテリアルデザインの思想が楽しさと心地よさを両立させていてくれるのは確かだ。安定性の面でも、Android 4.1 JellyBeanの頃からiOSと遜色ないレベルに達している。

デザイン性や操作感という点において、Android Lは、Android史上最高の出来栄えになっている。そして、筆者の中では、それらの点においてAndroidがiOSを上回った。特に、マテリアルデザインに基づくZ軸とアニメーションが好印象だ。

以上は、部分的かつ主観的な印象に基づく感想ではあるが、実際に筆者がそう感じたという事実を記しておきたい。最新バージョンであるAndroid L(4.5/5.0)とiOS 8が揃って一般向けに登場するのは、今秋となる。